Synology の BeeStation をレビューします。スマホやパソコンのデータを保存しておける「パーソナルクラウドストレージ」です。インターネット接続さえあれば端末を問わず外出先からでも自由にアクセスできます。
GoogleフォトやiCloud、Dropboxのように使うことができるうえに、サブスクリプションではない買い切りのサービスなので月々の利用料はかかりません。他社のクラウドサービスと連携できるほか、写真や動画データの管理・検索・バックアップに便利なソフトウェアも用意されています。
神戸ファインダーをご覧いただきありがとうございます。Aki(@Aki_for_fun)です。Synology社よりレビュー用に「BeeStation」をご提供いただきました。2024年2月に発売された商品で、筆者は3か月弱ほど使わせてもらっています。写真や動画などのデータの管理・バックアップにとても活躍してくれています。
Synology の BeeStation は「パーソナルクラウドストレージ」と題した商品です。その機能はまさにクラウドストレージで、写真やドキュメントなどの様々なデータを保存しておいて、スマホやパソコンなど様々な端末からインターネット接続で自由にアクセスすることができます。
もし「Googleフォト」や「iCloud」などのクラウドサービスの代わりを探しているなら BeeStation は要チェックです。一般的なクラウドストレージは無料の利用に制限があって、一定の上限より多くの容量を必要とする場合は有料のプランに加入することになります。最近は写真データの保存やバックアップのために大容量のストレージが必要になり、サブスクリプションで利用料を支払っている人も多いのではないでしょうか。一方で BeeStation は買い切りのサービスなので、継続的な料金がかからずとてもコスパが良いです。
BeeStation はデータ管理でお悩みのあらゆる人におすすめです。
・写真などのデータをクラウドで管理したい人
・写真や動画などの大容量データを手軽に他人に共有したい人
・スマホの容量が足りなくて困っている人
・PCやスマホのバックアップをとりたい人
・クラウドサービスのサブスク利用料金を節約したい人
……など
BeeStationってなに?
お手軽なクラウドストレージ!NASの入門にもぴったり
BeeStation は Synology社の NAS機器とクラウドサービスを一般の個人ユーザー向けに使いやすくした商品です。ハードディスクが内蔵されていて、そこに保存したデータにはスマホやPCからインターネット経由で自由にアクセスできます。
簡単に言えば、「Googleフォト」や「Googleドライブ」のような機能を実現できるアイテムです。
BeeStation の容量は4TB。スマホやパソコンのデータを安心して保存しておける大容量ストレージです。写真はもちろん、動画やドキュメントなど、様々なデータの管理やバックアップに利用できます。
BeeStation には便利なソフトウェアもセットになっています。スマホやPCのデータを同期・バックアップしてフォルダで管理できる「BeeFiles」と、膨大な写真・動画のデータを日付で並べたりアルバムに整理して管理できる「BeePhotos」というアプリが用意されています。
これらのサービスの利用には料金がかかりません。つまりサブスクリプションではなく買い切りのサービスです。一般的なクラウドサービスにありがちな利用料金の値上げに悩む必要がありません。
もし NAS製品をご存知なら、NAS をデータ管理目的に特化させて使いやすくした商品だと思ってもらえれば分かりやすいです。BeeStation はパソコンやサーバーなどの IT機器に詳しくない人でも使いやすいオンラインストレージとして非常に魅力的です。NAS に興味があったけど難しそうでなかなか手が出なかったという人にもおすすめです。
参考リンク
・プレスリリース:Synology社製、手軽に使い始められるパーソナルクラウドストレージ「BeeStation」を発表 | 株式会社アスク
・製品詳細:BeeStation | Synology パーソナルクラウドストレージ | 株式会社アスク
・公式WEB:BeeStation | 自分専用のパーソナルクラウド
サブスク不要!ほかのクラウドサービスとの料金比較
BeeStation がほかのクラウドサービスと異なるのは、ハードディスクが内蔵されている製品本体を最初に購入すればあとは無料で 4TB ものクラウドストレージサービスを自由に使うことができる点です。
本体価格は36,864円(Amazon価格 2024年5月22日時点)で、一度買ってしまえばあとは追加料金不要でサービスを使い続けることができます。
ふつうのクラウドサービスは月額料金を支払うことでストレージを借ります。利用のためには永続的に費用が発生するのに対して、BeeStation はそのストレージを買って自分のもとに確保することができるので初期費用以外にはコストがかかりません。つまり BeeStation は月額料金不要、サブスク契約不要のクラウドサービスです。
BeeStation は非常にコスパが良いので、Googleフォトの代わりや、iCloud以外のiPhoneのバックアップ保存場所としておすすめです。
実際どのくらいコストパフォーマンスに優れているのかを、ほかのクラウドストレージサービスと比べてみましょう。
表:クラウドストレージ主要3サービスの利用料金比較(月額)
iCloud | Dropbox | ||
---|---|---|---|
2GB | – | – | 無料 |
5GB | 無料 | – | – |
15GB | – | 無料 | – |
50GB | 130円 | – | – |
100GB | – | 250円 | – |
200GB | 400円 | – | – |
2TB | 1,300円 | 1,300円 2,900円(AIプレミアム) | 1,500円 1,200円(年間払いの場合の月額) |
3TB | – | – | 2,400円 2,000円 (年間払いの場合の月額) |
6TB | 3,900円 | – | – |
12TB | 7,900円 | – | – |
参考リンク:
・iCloud+ すべてのプランを比較する – Apple
・Google One プランと料金設定
・Dropbox 全プラン比較
※DropBoxには3人以上のユーザー向けのビジネスプランもあります。
BeeStation(4TB) は36,864円(Amazon価格 2024年5月22日時点)で買いきりです。
これを月額料金に換算すると、1年使えば1か月あたり3,072円、2年使えば1か月あたり1,536円、3年使えば1か月あたり1,024円です。
クラウドサービスの場合、2TBの月額料金が1,200円~1,500円ほどなので、長期で2TB以上の大容量が必要になるなら BeeStation のほうがコストパフォーマンスで有利と言えそうです。
クラウドサービスは、2GB~15GB程度であればアカウントを作るだけで無料で利用できるのが魅力です。無料で使える容量に限界を感じたタイミングで BeeStation の利用を検討することをおすすめします。
ちなみに BeeStation で実際に使用できる容量は 3.48 TB です。その理由については「BeeStationのストレージ容量と使用量はどのように計算されますか – Synology ナレッジセンター」をご参照ください。
BeeStationの使い方・セットアップの方法
BeeStation を使ってみて驚いたのは、その扱いやすさです。特に初期設定の簡単さには感心しました。わたしは Synology の NAS製品を以前から利用していますが、それらと比較してBeeStation のほうが圧倒的にお手軽で簡単でした。これならガジェットに不慣れな人でもおすすめできます。
商品の内容や、初期設定の方法について解説します。
パッケージ内容
こちらが「BeeStation」の製品本体です。
非常にシンプルな構成で、ボタンは電源スイッチのみです。USB接続が2か所用意されており、外付けのドライブにBeeStation内のデータのバックアップをとることができるようになっています。
電源コードとLANケーブルが付属します。
とにかく簡単!パソコン不要で始められる初期設定
BeeStation を使うにはまず付属の電源ケーブルを繋いで電源を入れます。さらにLANケーブルをWiFiルーターなどに接続してインターネットにつなぎます。
これでハードウェアの準備は完了。あとはスマホで初期設定を行います。
初期設定はとても簡単でスマホでQRコードを読み込むだけです。
(PCでも可能ですが本記事ではスマホの手順を紹介します)。
QRコードをスマホのカメラで読み込んだら、画面の指示に従ってセットアップを進めます。
まずはSynologyアカウントを作成しましょう。すでにアカウントがあるならサインインです。アカウントはGoogleアカウントやApple IDから作成することもできます。
画像:セットアップの手順
セットアップの手順は電源ボタンを押すだけなので簡単です。最初は時間がかかるのでしばらく待つことになります。
セットアップが完了したら BeeStation に名前を付けます。これで基本的な準備は完了です。
セットアップの手順解説:Synologyの自宅クラウド「BeeStation」をセットアップ。難しい点はないがアカウントの管理が最重要!【自宅Wi-Fiの“わからない”をスッキリ!】 – INTERNET Watch
アプリで分かりやすいデータ管理
BeeStation の機能は主に「BeeFiles」と「BeePhotos」というサービスを用いて行うことになります(GoogleドライブやGoogleフォトのようなものです)。スマホ向けのアプリが用意されているほか、ブラウザから「ポータルサイト」にアクセスしてこれらのサービスを利用できます。
BeePhotos
「BeePhotos」ではスマホやPCの写真をバックアップをとって、管理することができます。機能的には「Googleフォト」をイメージしてもらうと分かりやすいです。また Synology の NASユーザーならご存知の「Synology Photos」と機能的にもインターフェイス的にもそっくりです。
「BeePhotos」に保存されたデータは後で紹介する「BeeFiles」とは別の場所で保存・管理されます。
BeePhotos に保存された写真は原則として、日付ごとに整理されます。また保存された写真をシステムが自動で解析して写真の内容ごとにアルバムにまとめてくれます。例えば人物ごとにまとめられたアルバムや、「風景」や「料理」など被写体ごとにまとめられたアルバムです。
検索機能やクイックフィルタの機能を利用して写真を探すこともできます。例えば動画だけに絞り込んで表示したり、写真の位置データやExif情報を参考に、撮影に用いたカメラやレンズごとに写真をソートすることもできます。
スマホの写真のバックアップをとることも簡単にできます。アプリの「その他」のタブからバックアップを有効化できます。
写真を他人に共有したいときはまずシェアしたい写真を「アルバム」にまとめます。それからそのアルバムを「共有」してほかの人にも見られるように設定します。
共有されたアルバムは、そのリンクを持つ人なら誰でも(Synologyのアカウントがなくても)写真を閲覧してダウンロードすることができます。
BeeFiles
「BeeFiles」では、任意のファイルやフォルダをアップロードできるほか、PCの特定のフォルダと同期させてバックアップをとることができます。機能的には「Googleドライブ」や「Dropbox」がよく似ています。
「BeeFiles」に保存されたデータは「BeePhotos」内のデータとは別の場所で保存・管理されます。
BeeFiles はフォルダベースで様々なデータを管理できます。
自分でアップロードしたファイルやフォルダは「マイファイル」の中に保存されます。
またパソコンの特定のフォルダと同期させることも可能で、同期させたフォルダは「コンピューター」で管理できます。
BeeFiles で作成したフォルダは共有リンクを作って、他人とシェアすることもできます。共有される側は Synology アカウントがなくてもデータを閲覧してダウンロード可能です。
さらに、Dropbox、Google Drive、Microsoft OneDriveなどのクラウドサービスとの同期が可能です。
BeeStation デスクトップアプリ
BeeStation はパソコン向けのアプリもあります。このアプリ「BeeStation for Desktop」は公式ウェブサイトの「ダウンロードセンター」からインストールできます。
このデスクトップ向けアプリを利用すれば、PC のデータを BeeFiles や BeePhotos に同期させてバックアップできます。
上の画像で紹介した方法は、パソコンからBeePhotosにまとまった数の写真をアップロードしたいときに便利です。
参考:電話やコンピュータからBeePhotosに写真をインポートする方法 – Synology ナレッジセンター
またPCのエクスプローラー(あるいは Mac の Finder)で BeeFiles や BeePhotos のデータにアクセスできるように設定できます。
方法は下記二つの記事が参考になります。
参考:自分のコンピュータからBeeStationのファイルに直接アクセスする方法は – Synology ナレッジセンター
参考:自分のコンピュータでローカルにBeeStationファイルにアクセスする方法はありますか – Synology ナレッジセンター
ユーザーを招待して最大8人で BeeStation を共有して使用できる
BeeStation はひとつの製品を複数の人で共有して使用することができます。
方法は、まずポータルサイトやBeePhotos などの画面から「システム設定」を選択します。
左のリストから「ユーザー」を選び、「ユーザーの招待」を選択します。これでユーザーを招待するリンクを発行できます。
この招待リンクを BeeStation を使ってほしい人に送ります。リンクを受け取った人は、このリンクにアクセスして、Synologyアカウントを作ってサインインするだけで自由に BeeStation を使えるようになります。
ユーザーごとにデータを管理できるので、プライバシーの面でも安心です。BeeStation の所有者のアカウントでも勝手にほかのユーザーのデータを見ることはできません。
参考:家族や友達をBeeStationに招待する方法は – Synology ナレッジセンター
NASとBeeStationの比較
BeeStation の類似製品としては以前から NAS が人気です。わたしも Synology の NAS製品をふたつ(「DS1618+」と「DS920+」)愛用しています。
BeeStation は NAS製品から派生したようなタイプの新商品(2024年2月発売)です。従来型のNAS製品とはどう異なるのか、どちらのほうがおすすめなのか解説します。
まずざっくりと結論を言えば、写真や動画などのデータ管理が目的なら NAS よりも BeeStation のほうがおすすめです。ただし、NASと比べたときに欠点や制限もいくつかあるのでその点についてより詳しくお伝えします。
BeeStationはこんな人におすすめ!良いところと残念なところ
BeeStation と NAS 製品の大きな違いのひとつは「使いやすさ」です。BeeStation のほうがシンプルでわかりやすく使いやすいので、IT機器初心者の人に特におすすめです。
BeeStation はインターネットの接続環境(WiFiルーター)とスマホさえあれば使用できます。NASは利用のために絶対にパソコンが必要なうえに、写真などのデータ管理をするための設定がやや煩雑です。
BeeStation は最初からデータ管理のために特化して作られた製品なので、サービス内容がシンプルで分かりやすいです。NAS はファイルサーバーとして利用できるほか、ネットワークカメラと接続させたり、様々なアプリケーションを活用してデータを便利に管理できるなど、非常に多機能です。NAS はできることが多い分、どうしても使い方や設定が複雑になってしまいます。ヘルプページを参照してもたくさんのことが書いてあって、読み解くのに苦労するかもしれません。
写真などのデータ管理におけるアプリケーションの使い勝手は NAS と BeeStation でほとんど違いはありません。
ただし、「BeePhotos」と「Synology Photos」(NASの写真管理用アプリ) で微妙に異なる点があったので2点だけ以下に紹介します。
- 「BeePhotos」は日付をベースとしたタイムライン表示のみで、フォルダ表示できない。
「Synology Photos」はタイムライン表示とフォルダ表示を自由にスイッチして表示できる。 - 「BeePhotos」のアルバムの中の自動分類に「主題」がある。これは写真の主な被写体を自動で分類してまとめる仕組み。
「Synology Photos」には記事執筆時点ではこの機能がない(人物ごとに分類するアルバム機能は BeePhotos にも Synology Photos にもあります)。
わたしは「Synology Photos」の仕様に慣れていたので、「BeePhotos」がタイムライン表示のみでフォルダによる管理ができないのはすこし不便に感じました。「Synology Photos」は日付でもフォルダベースでも管理できて便利です。
とはいえ、類似サービスの「Googleフォト」も基本的にタイムライン表示なのでむしろ「BeePhotos」 のほうが一般的な仕組みかもしれません。また BeeStation でデータをフォルダ管理したい場合は「BeeFiles」が使えます。
アルバムの「主題」機能は便利だと思うので、早くSynology Photosにも実装してほしいです。
追記:バージョン1.5からSynology Photos でも「主題」のアルバム機能が実装されています。わたしの環境だとNASのバージョンがすこし古かったようでアップデートしたことで対応しました。もしお使いのNASでこの機能がオフになっている場合は、DSMを手動で最新のものにアップデートすると使えるようになります。
参考:リリースノート
参考:Synology Photosで顔と物体の認識機能をサポートしているSynology NASモデルはどれですか
以上お伝えしたように、データ管理目的であれば、BeeStation で「BeePhotos」や「BeeFiles」が使えれば機能的には十分です。これらのサービスは Synology NAS の「Synology Photos」や「Synology Drive」と機能的にそっくりでほとんど同じことができます。
NASに興味があるけれどなんとなく難しそうで断念していた人に BeeStation は非常におすすめです。また、「Googleフォト」や「Dropbox」からの移行先としても BeeStation はぴったりだと思います。
BeeStation の使い方に関するヘルプページ:Knowledge Center – Synology
BeeStatino のアプリやマニュアル・仕様:ダウンロードセンター – BST150-4T | Synology Inc.
NASはこんな人におすすめ!良いところと残念なところ
NAS がおすすめなのは4TBよりも多い大容量のストレージが必要な人や、IT機器が比較的得意でヘルプページなどの記事を読んで自分でやりたいことの方法を調べることができる人です。
NAS の優位点は容量を自由に選べることにあります。BeeStation は現時点で容量が 4TB しか選択できません。NASであれば、製品のバリエーションが多いうえに、内蔵するHDDやSSDを比較的自由に選ぶことができます。
実際にわたしはNASにあらゆる写真のデータを保存していて10TB以上ものデータを管理しています。BeeStationは現状だと 4TB の選択肢しかなく、これ以上容量を増やしたい場合、新たにBeeStationを買い増しするしかありません。NAS ならばより大容量のデータに対応できます。
NAS は自分でドライブを用意したり、RAIDを自分で選んで設定するなど手間と知識が必要ですが、そのぶんカスタマイズ性に優れています。BeeStation は内蔵されているのが HDD一台のみなので RAID によって通信速度を速くしたり、冗長性を確保したりすることができません。またBeeStation は内蔵の HDD が動く音がするのですが、NASなら SSDを選択するなどして静音性を確保することができます。
自分でヘルプページを読んだり、サポートに問い合わせをしたりして、自力で製品を使いこなす自信がある人は NAS 製品の購入がおすすめです。より大容量のストレージを確保することができますし、非常に多彩なアプリケーションを駆使して便利に使うことができます。