Synology社のNASを使っているユーザーが自由につかえる写真管理ツールの Synology Photosをレビューします。パソコンやスマホで写真を整理したり共有したり、バックアップをとるのに便利なソフトウェアです。
神戸ファインダーをご覧いただきありがとうございます。Aki(@Aki_for_fun)です。
Synologyさんから連絡をもらいまして「新しいSynology Photosをつかってブログで感想を共有してもらえませんか」との依頼を受けました。試用のために対応の新しいOS「DSM 7.0」がインストールされた「DS920+」も一緒に貸してくれました。
追記:記事公開後に返却する予定だったのですが、そのままいただけることになりました。今後のNASに関する記事作成のために利用させていただきます。
わたしはもともとSynologyユーザーですが、OSのメジャーアップデートには漠然とした不安と面倒くささを感じていて手つかずの状態。せっかくなのでこれを機に試してみることにしました。使ってみた率直な感想をお伝えします。
そもそも NAS とは
NASとは “Network Attached Storage” の略称。「ネットワークに接続するストレージ」です。一般的には「ナス」と呼ばれています。ネットワーク経由でHDDやSSDにアクセスしてファイルを開くことができます。ふつうのストレージとちがって複数のパソコンやスマホからアクセスできるし、ネット経由でどこからでも写真や動画のファイルを開いたり編集できて便利!
よくあるクラウドサービスとちがって月額の利用料もかかりません(最初にNASや内蔵のストレージを買うためのお金は必要です)。またじぶんの自宅やオフィスにストレージを置いておけるので大切なデータをじぶんで管理できる安心さもあります。容量の増加もかんたんにできて良いですね。
ほかのクラウドサービスと連携できたりNASのバックアップサービスも充実していて多機能です。さまざまなNASメーカーが独自のサービスを提供しており、Synologyは近年写真管理の機能に力を入れています。
Synology Photosについて
NAS利用者向けの写真管理ソフト
SynologyのNASを利用している人が自由に利用できる写真管理ソフトウェアが “Synology Photos” です。
Synology NASには「パッケージ」と呼ばれる便利なソフトがたくさん用意されていてそのひとつが Synology Photos です。Synology Photosの管理画面はウェブブラウザで起動できます。
スマホ向けのアプリとして用意されているものもあります。Synology Photosもモバイル向けのアプリとして Photos Mobile があるのでパソコンだけでなくスマホでも同様のシステムを利用して写真管理できます。
DSM 7.0を機にリニューアル
Synology NAS にはもともと写真管理向けに Photo Station と Moments と呼ばれるパッケージが用意されています。Synology PhotosはNASのOSのメジャーアップデートを機にこれらのパッケージを統合する形で登場しました。
Synology Photos を利用するにはNASのOSを DSM 7.0以降にアップデートする必要があります。逆に言うと従来のPhoto Stationや Moments を使うにはDSM 6.2などのバージョンでないといけません。ユーザーとしてはここが悩ましいところで新しいOSで新しいソフトの機能を利用するか、従来の慣れ親しんたシステムを維持するか迷うところです(なので筆者は記事冒頭にも書きましたが新OSについて様子見をしていました)。
- 公式ウェブサイト:Synology Photos 写真愛好家とプロカメラマンの専用ギャラリー – Synology公式ウェブサイト
- 公式ウェブサイト:Synology Photosに関するチュートリアルとFAQ – Synology ナレッジセンター
- 参考:特別企画:NASに保存した写真データを効率的に管理…「Synology Photos」先行レビュー – デジカメ Watch
- 参考:Synology、NAS用OS「DSM7.0」正式版を7月13日にリリース – INTERNET Watch
DSM 6.2 で利用できるパッケージ
DSM 7.0 で利用できるパッケージ
筆者のNASユーザー的立ち位置について
筆者は当サイトのようなメディアで記事を書くために日常的に写真を撮るほか、カメラが趣味なので大量の写真や動画ファイルを取り扱っています。最近はユーチューブもやるので動画ファイルも増えて大変です。それらのデータを管理するためにSynologyのNASを活用しています。何年にもわたって蓄積された10TBに近い写真・動画データをNASに保存して、そのデータを日常的にPCやMac、スマホでアクセスして管理・編集してきました。
ですが、わたしはSynologyのMomentsを使ったことがありませんでした。またPhoto Stationのアプリ画面をわざわざ起動することもほとんどなくて、写真ファイルを管理するときはWEBブラウザでDSMのFile Stationを使うか、SMBプロトコル経由でWindowsのエクスプローラーやMacのFinderを利用してデータの管理をしていました。
なのでSynologyユーザーとはいえ従来のPhoto StationやMomentsをあまり本格的には活用しておりませんでした。今回の記事執筆にあたってPhoto Stationはがんばっていろんな機能を試してみましたが、Momentsまでは手が回りませんでした。そのため新旧ソフトの総合的な比較はできていないところがあるかもしれませんがご了承ください。
一方で、スマホアプリのDS Photoは頻繁に利用していました。DS Photoはスマホ版のPhoto Stationで、DSM 7.0以降ではこちらもPhotos Mobileに置き換わります。個人的にはスマホのアプリの変化のほうが体感的には大きなものでした。そのあたりについてはこれからより詳しく言及します。
Synology Photosのここが良い
Synology Photosを実際に使ってみた感想をお伝えします。
あくまで記事執筆時点での機能をもとに書いております。ソフトの仕様や機能は今後更新される可能性があることをご了承ください。
UIが直感的で使いやすい
まずSynology Photosをパッと見て現代的な装いになったという印象を受けました。
画面右上にアイコンがあって、サムネイルの大きさを調節、ファイルをアップ、フォルダを作成、並び替えなどができます。上のスクショした画面だとフォルダ表示になっていて、画面左にフォルダ構造がリストで表示されています。Synology Photosはこの「フォルダ表示」と時系列でファイルが並ぶ「タイムライン表示」に切り替えることができます。
また画面上のタブからメインスペースを「写真」、「アルバム」、「共有」と切り替えられます。「アルバム」は特定条件で写真をまとめて整理できる機能のページで、「共有」はほかのひととシェアしている写真を閲覧・管理できるページです。
おそらくこのユーザーインターフェイス(UI)の変更が、実際の使い勝手において最も大きな影響を及ぼしています。細かい機能についても見ていきますが、従来のPhoto Stationは使ってみようというしっかりした意志をもって扱わないと存在も知らないであろう機能がたくさんあります。一方でSynology Photosはなんとなく画面を見てるうちにその機能に触れることができます。
一般ユーザーがとっつきやすいデザインになっているというのがSynology Photosの最大の魅力だと思います。難しいことを考えずにとりあえず使ってみようという気持ちになれるのが良いですね。
クイックフィルタは写真を掘り出すのに活用できそう
Synology Photos には「クイックフィルタ」という絞り込み機能があります。
上の画像のような絞り込み条件を利用できます。いくつか補足すると、ファイルタイプというのは写真か動画か、ジオロケーションは場所情報、露出時間はシャッタースピード、口径はF値のことです。
つまり日時や場所などの条件を指定して、膨大なファイルのなかから目当ての写真や動画を見つけ出すことができる機能です。
たくさんの写真や動画データがたまっていくと自分が探しているファイルがなかなか見つからなかったり、自分でも存在を忘れているような画像もなかにはありますが、この絞り込み機能を利用することでそういったデータを見つけ出すことができます。複数の条件を組み合わせたフィルタリングも可能です。
カメラやレンズの機種、撮影時の設定情報など、プロカメラマンやカメラ愛好家が求めるちょっとマニアックな情報でも絞りこむことができます。わたしもたくさんのカメラやレンズをつかって撮影を楽しんでいるので機種で絞り込めるのは助かりますね。
アルバム機能が便利!AI顔認識がすごい
Synology Photos には特定の写真をまとめることができる「アルバム」という仕組みがあります。手動でファイルを選んでまとめることもできるほか、特定条件でファイルをまとめてアルバム化することもできます。
自動で作られるアルバムとしては「場所」や「人々」、「ビデオ」、「最近の追加」など。
個人的に特に良いと思ったのは「人々」のアルバムを自動で作ってくれるところです。AIが自動で写真を顔認識してグルーピングしてくれます。自分や家族、友人の顔を区別してまとめてくれるので写真の管理にとても役立ちます。
この機能を利用するには、Synology Photos画面右上のユーザーアイコンから設定に進み、「共有スペースの『人々』アルバムを有効化」にチェックを入れましょう。
AIが認識した人物の顔に名前をつけたり、システム的に別人物としてカウントされた人を結合することもできます。例えば、同一人物でもひげの有無や、やせてるときと太ってるときで別人物あつかいになっていました。こういったときは手動で操作して結合してあげればオーケーです。
AIによる顔認識機能はPhoto Stationでは使えなかった機能なのでとても魅力的です。この機能を利用したい人は、ぜひ対応のNASでOSのバージョンをDSM 7.0にアップデートしてSynology Photosをインストールしましょう。
参考:どの Synology NAS モデルが Synology Photos の顔認識機能をサポートしていますか? – Synology ナレッジセンター
例えばわたしの環境だとCanon PowerShot PICKというカメラに人物認識機能があるので、そのカメラで撮った写真には人物の情報が紐づいており、Photo Stationでも人物タグとして認識されていました。
またSynology Photosでは「クイックフィルタ」でつかったような絞り込み条件でアルバムをつくることもできます。
カメラやレンズの種類、場所、人々(名前)などの条件を組み合わせて指定できます。例えば「一眼カメラで撮ったAさんの写真のアルバム」や、日付や場所データを指定することで「旅行のときに撮影した写真・動画のアルバム」をつくることができます。
自分で写真や動画に「タグ」をつけてそれをアルバムにまとめることもできます。例えば、猫の写真に「ネコ」のタグをつけておけば、猫の写真だけの幸せなアルバムを作ることができるわけです。将来的には動物や風景などもAIで自動でタグを作ってくれる機能に期待したいですね。
写真・動画ファイルの共有がしやすい
Synology Photos はファイルの共有機能が便利です。特にスマホアプリでも細かい共有設定ができるようになったのが良いと思いました。
Synology Photosやそのスマホ向けアプリのPhotos Mobileだとユーザーを限定して共有したり、公開リンクで閲覧のみ可能にしたり、あるいはダウンロードの権限も付与したり、選んで設定できます。パスワードの保護やリンクの有効期限の設定も可能です。
従来のDS Photo(スマホアプリ)だとここまで細かく設定できなくて、公開リンクを共有できるだけです。PCのPhoto Stationからだとパスワードの保護設定はできます。
※ファイルを共有するには事前にDSMのコントロールパネルの外部アクセスの設定を済ませておきましょう。「QuickConnect を有効にする」にチェックマークを付けておくのが大事です。詳しい共有方法についてはSynology公式の動画説明がわかりやすかったです。
参考:Synology Photos その3:共有方法と遠隔地からのアクセス | Synology – YouTube
参考:共有 | Synology Photos – Synology ナレッジセンター
参考:QuickConnect | DSM – Synology ナレッジセンター
スマホの写真・動画のバックアップができる
Photo Stationのモバイル向けアプリを使えば、スマホの写真や動画のバックアップをとることもできます。
通信量を考慮してWi-Fi環境でのみバックアップのアップロードを行うよう設定できます。
また動画は容量が大きいので除外したいということであれば「写真のみ」をチェックすれば写真ファイルだけ選んでバックアップをとってくれます。
スマホに保存されている大切な写真や動画。スマホを壊したり紛失してしまったときに、バックアップがなければそれらのデータは永遠に失われてしまいます。iPhoneならiCloudにバックアップをとることができますが、無料でつかえる容量だと足りなくてバックアップを怠っている人も多いのではないでしょうか。せっかく Synology の NAS を利用しているのであれば、ぜひバックアップをとりましょう。
※DS Photoでもバックアップ機能はあります。
気になったこととアップデートの注意点
DSM 7.0にアップデートする上での注意点についてお伝えします。
一部使えなくなる機能がある
Synology Photosにアップデートすることで使えなくなる機能もあります。
例えばPhoto Stationやそのモバイル用アプリのDS Photoでは写真の位置情報に基づいて地図表示できるマップビューという機能があるのですが、Synology Photosやそのモバイル向けアプリではそれができません。位置情報ごとに整理されたアルバム機能はあるものの、マップ表示にはなりません。
Synology公式サイトに使えなくなる機能がまとめてあるので、DSM 7.0以降にアップデートする前によく確認しておくことをおすすめします。
表:Synology Photosで使えなくなる機能
Synology公式サイトには「削除された機能の一部は、Synology Photosの将来のアップデートに伴い、再設計および再起動される可能性があります。」ともあります。Synology Photosは最新機能が搭載されたパッケージですがまだ発展途上ともいえるかもしれません。
参考:Synology Photos、Photo Station、Synology Momentsの機能比較 – Synology ナレッジセンター
アップデートは簡単にできてもバージョンダウンは難しいのでよく確認しよう
DSMアップデートは一度最新のものにすると、あとから以前のものに戻すことはできません。ダウングレードが難しいことをよくふまえた上でバージョンアップを検討しましょう。
参考:更新 | DSM – Synology ナレッジセンター
現行のDSMでよく使ってる機能があればそれがバージョンアップしてもちゃんと使い続けられるかを確認したほうが良いです。気になることは調べたり、サポートにがんがん質問してしまうと良いと思います。サポートのページにアクセスすれば自分が困っているトピックの関連記事が見つかるときもあります。
関連記事:Synology NASのOSが3年ぶりに刷新、性能向上、自動復旧、テレワーク向け機能まで備えた「DSM 7.0」を試す【イニシャルB】 – INTERNET Watch
Synology PhotosのためにDSM 7.0 アップデートすべき?
けっこうおすすめ
これからSynology NASを使い始める人、最近利用を始めた人はDSM 7.0以降のOSで、Synology Photosを活用すると良いと思います。直感的で使いやすいデザインで、写真の管理をサポートしてくれる機能が充実しています。共有もしやすいので特にライトユーザーは満足して使えるのではないでしょうか。
様子見でもいいかも
ただし、個人的な意見としては、以前からSynology NASを利用しているヘビーユーザーは、必ずしも急いでアップデートしなくても良いのではないかと思います。
この記事で紹介したようなSynology Photosの良いところはありますが、OSをメジャーアップデートするとなると慣れ親しんだシステムから新しいものに適応しなければなりません。NASは多機能なので写真管理以外のパッケージの仕様もよく確認する必要があります。アプデするなら時間と気持ちに余裕があるときにしたほうが良いのではないでしょうか。
もちろん基本的にはバージョンは新しいほうが最新のシステムを活用できるのでいつかはアップデートしたほうが良いと思うのですが、一度OSのバージョンを上げてしまうとなかなか元に戻せるようなものでもありません。サポートページに行けば新しいOSの機能をいろいろと確認できますので、自分が特によく使っている機能がOSのアップデートでどうなるかは把握しておくとよいでしょう。
分からないことはサポートに問い合わせるのも良いと思います。わたしもこれまで何度かサポートのお世話になっていますが、レスポンスがよくて頼りになります。すこし日本語が不自然なときがあるもののコミュニケーションに支障はないです。
わたしはどうするか
個人的には、Synology Photos との比較のために使ってみた Photo Station の機能にけっこう満足しました。なので当面はいまのバージョンのOSのままで様子見を続けようと思います。新しいOSや新しいソフトがどうこうというよりは、「NASっていろんなことできるじゃん!」という発見があったことが良かったです。
写真も動画もあとで振り返ると価値がいっそう大きくなるんですよね。なので、それらを整理して探し出せるのが大事です。ただ置いておくだけだと、せっかく記録した映像も忘れてしまったり見つけられなくなってしまったりします。
データをとりあえず置いておくだけであれば、NASを買って簡単な初期設定をすませればオーケーなのですが、それだけではもったいない。Synology NASはほんとうに機能が多くて、たぶんユーザーもまだまだ使っていない機能があると思います。写真ファイルの管理をしているひとはぜひ Photo Station や Synology Photos をつかってみてください。
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