
神戸ファインダーをご覧いただきありがとうございます。Aki(@Aki_for_fun)です。パシフィコ横浜のCP+にて、シグマブースを訪れて話題の新製品「Sigma BF」を見てきました。実際にカメラを手に取って感じたことをお伝えします。
賛否両論のあるカメラ。はたしてその真価とは。
Sigma BFは、2025年2月24日に発表されたばかりのフルサイズミラーレス一眼カメラ。従来のカメラとは一線を画すミニマルなデザインとコンセプトで、カメラ業界で大きな注目を集めています。
発売日:2025年4月予定
価格:385,000円
カラー:ブラック、シルバーの2色展開
驚きのデザインとこだわりの造形美
CP+会場を訪れてまず驚いたのがシグマブースの異質な展示。カメラやレンズを展示するエリアは、円柱型のドームで覆われていて入場する人数が制限されています。大勢の人で賑わうパシフィコ横浜のなかでも、その場所だけは落ち着いてゆったりと製品をハンズオンできるようになっています。まるで高級ブティックかのようです。その空間の中心のテーブルに展示されていたのが「Sigma BF」でした。

まずはブラックカラーの「Sigma BF」を触らせてもらいました。手に取ってわかる、その上質さと美しさ。

継ぎ目のないソリッドなデザインです。それもそのはず。ボディはアルミニウムのインゴットから7時間かけて削りだしているのだとか。そのため一日の生産台数も非常に限定的で、一部報道によると1日9台しか製造できないそうです。

デザインのために犠牲になる操作性
Sigma BFは、従来のカメラとは一線を画すミニマルデザインです。ファインダーもアクセサリーシューもなく、シャッターは電子シャッターのみでメカシャッターがありません。さらにSDなどのメモリーカードスロットも排除されていて、内蔵の230GBのメモリに写真や動画ファイルを記録する仕様です。USB-Cポートが用意されていてそこからデータの通信が可能なものの、いまどきのカメラには珍しくWi-Fiが非搭載というかなりとがった構成です。

ボタン類も非常にシンプルです。シャッター以外にはボタンが3つとダイヤルがひとつあるだけ。しかもボタン類にはほとんどマークが記載されていないので、一見するだけではそのボタンがどのように機能するのか、どう使うのかがわかりません。

一般的にはボタンが少ないのは初心者向けのエントリーモデルくらいで、多くのメーカーの上位モデルはボタンやダイヤル類の数を増やして操作性の向上を目指しています。ボタンやダイヤルがきちんと用意されていたほうが扱いやすいと認識されているからです。一方のSigma BFはその対極を行くような設計です。40万円近い高級価格帯のカメラでありながら、ボタン類はどの機種よりも少なくシンプルです。
わたしも実際にSigma BFを触ってみましたが、正直その操作性に戸惑いました。しばらく使っていれば慣れるのかもしれませんし、使い方を説明してもらえばよりスムーズに扱えるのかもしれません。ですが、従来のカメラに慣れているわたしにとっては決して直感的に扱えるものではありませんでした。

持ちやすいかと言われば、答えはノーです。
たしかに、「意外と悪くない」とは思いました。美しさに特化したデザインではあるものの、グリップの親指があたる部分や、カメラの角には緩やかなカーブが施されていて、持ちやすさにも一定の配慮を感じました。
とはいえ、あくまでそれは最初の期待値が低いに過ぎないからこその感想です。結局のところ、ほかのカメラと比べれば持ちにくいし、カメラのエッジが手に刺さる感覚があって痛かったです。
使いにくい。それでも賞賛せざるを得ないカメラ
持ちやすくもない、操作もわかりづらい。カメラの中身も特に目新しさはなく、性能面で既存のカメラと大きな差別化はない。こう書くとSigma BFは何も良いところのないカメラのように聞こえます。
しかし、それでもわたしはシグマに「このカメラを作ってくれてありがとう」と言いたい。
手に取ったときのプロダクトが放つその「上質さ」はほかに代えがたいものがあります。Sigma BFはとにかく「美しいカメラ」です。それは間違いありません。美しさにはそれだけで価値があるとわたしは信じます。Sigma BFを手に取ったときの感動はほかのカメラでは体験しえないものでした。そしていまBFのデザインを見返してもこの美しさは本物だと感じます。
機能性や操作性を重視して開発されるカメラが大半ななかで、あえて「美しいカメラ」をつくることにこだわってくれたシグマ。その強い意志を支持したいです。
「Beautiful Foolishness of things」岡倉天心が英語で書いた「茶の本」の一節から名付けられたという「Sigma BF」。スマホでも写真を撮れるこの時代に、時間をかけて作られた高級なカメラ。「美しく」も「愚か」な製品かもしれません。これがいったいどれだけ売れるのか、わたしにはわかりません。わかるのは間違いなく挑戦的な製品であるということです。
シグマはCP+の展示会場においてすべてが洗練されていて美しかったです。例えばカメラやレンズを展示するブースの横には、たくさんの写真集やアートブックが置かれた本棚とそれを手に取って見るためのイスが置いてありました。
用意されている製品カタログやプロモーションカードも、明らかに上質。優れたプロの仕事が施されていると感じました。どのメーカーよりも印刷物が美しかったです。
CP+という日本を代表するカメラメーカーが勢ぞろいするイベントにおいて、おそらく最も「アート」に対して真摯な姿勢を示したのがシグマだと感じました。そのシグマがいま本気で売り出そうとしているのが「Sigma BF」です。
美しいカメラは、売れるのか。期待しています。
YouTubeも見てね
CP+でシグマブースを訪れてきた様子を動画にしてYouTubeにアップしています。Sigma BFはもちろん交換レンズの体験もさせてもらいました。ぜひご覧ください。