DZOFilmのシネマレンズ「Linglung 20-70mm T2.9」と「Linglung 10-24mm T2.9」をレビューします。マイクロフォーサーズマウント用なのでブラックマジックデザインのBMPCC4KやパナソニックGH5、GH5Sなどのカメラで使うことができます。シネマレンズおもしろいですよ!
神戸ファインダーをご覧いただきありがとうございます。Aki(@Aki_for_fun)です。システムファイブ様より依頼を受けてレビュー用にDZO Filmのシネマレンズをお借りしました。Blackmagic Pocket Cinema Camera 4K(BMPCC4K・ポケシネ4K)に装着して実際に撮影してみたので、レンズの特徴やシネマレンズとはどういったものなのかお伝えします。
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DZOFilm シネマズームレンズの主な仕様と特徴
DZOFilmのシネマレンズ「Linglung 20-70mm T2.9」と「Linglung 10-24mm T2.9」はマイクロフォーサーズマウント用です。どちらもズームレンズでこれら2本のレンズがあれば広角から中望遠まで幅広い焦点距離を使い分けることができます。
Linglung 20-70mm T2.9の仕様
焦点距離 | 20-70mm |
Tストップ | T2.9 |
フォーカス回転角度 | 270° |
ズーム回転角度 | 100° |
アイリス回転角度 | 70° |
バックフォーカスの微調整 | ±0.3mm |
アイリスブレード | 12 |
最短撮影距離 | 0.79m |
フィルターサイズ | 直径77mm |
フロント直径 | 80mm |
長さ | 153.3mm |
質量 | 1,100g |
Linglung 10-24mm T2.9の仕様
焦点距離 | 10-24mm |
Tストップ | T2.9 |
フォーカス回転角度 | 270° |
ズーム回転角度 | 100° |
アイリス回転角度 | 70° |
バックフォーカスの微調整 | ±0.3mm |
アイリスブレード | 12 |
最短撮影距離 | 0.61m |
フィルターサイズ | 直径77mm |
フロント直径 | 80mm |
長さ | 148.9mm |
質量 | 1,100g |
本格的なシネマレンズが個人でも買える価格に
シネマレンズは非常に高級なためかつてはプロの映像制作の現場くらいでしか使われることがありませんでしたが、DZOFilmは個人でも使えるように比較的低価格帯でシネマレンズを開発しました。スチルレンズと同じ程度のリーズナブルな価格です。
またMFTマウント用なのでパナソニックやオリンパスの一眼カメラのほか、ブラックマジックデザインのBMPCC4Kなど多様なカメラで用いることができます。
爆発的な人気を得たシネマカメラのBMPCC4Kの登場や、DZOFilmを含むリーズナブルなシネマレンズの登場で、個人の予算レベルでも映画用機材がそろう時代になりつつあります。映像業界を志す若者や、カメラファンのアマチュアから現在プロとして活躍する人まで、シネマカメラやシネマレンズを手にする人が増えています。
参考:動画撮影用カメラならBMPCC4K!わたしがシネマカメラを買った理由
シネマレンズらしい各種調整リング
「Linglung 20-70mm T2.9」と「Linglung 10-24mm T2.9」には4種類の調整リングがあります。
一番前のリングがフォーカスリングです。ほどよい重みがあって調整しやすいです。また回転角度が270°もあるので繊細なフォーカシングも可能です。
次がズームリングです。焦点距離の調整を行います。回転角度は100°あります。
そして絞りリング。どちらもT2.9からT22で調整できます(いわゆるF値のようなものです)。クリック感はありません。
最後にマウントに最も近い位置にあるリングがバックフォーカス調整リングです。カメラに合わせてバックフォーカス(レンズの最後端からセンサーまでの距離)を微調整できます。これを調整することでパーフォーカル仕様を実現できます(パーフォーカルについては後ほど説明)。このリングは一度調整したあとは動かないように固定しておけます。
シネマレンズの特徴!動画撮影に特化した専門設計
シネマレンズの特性についてご紹介します。シネマレンズ(シネレンズとも呼ばれる)は映像制作用に設計された専門的なレンズです。写真撮影を主としたスチルレンズにはないような様々な特徴があります。
シネマレンズの主な特徴
- パーフォーカル仕様
- 正確で美しいフォーカシングが可能
- シネマ機材を使いやすいレンズ設計
- フォーカスブリージングが抑えられている
- 絞りリングがF値ではなくT値で表記されている
※おおよその傾向なのですべてのシネマレンズがこの特徴に当てはまるとは限りません。
パーフォーカル仕様
DZOFilmのシネマレンズ「Linglung 20-70mm T2.9」と「Linglung 10-24mm T2.9」はパーフォーカル仕様(同焦点設計)になっています。つまり一度被写体にフォーカスを合わせればあとはズームリングを回して画角を変えても被写体にピントが合い続ける仕組みです。これはスチル用のレンズにはなかなかない特徴です。
パーフォーカル
DZOFilmシネマレンズ Linglung 20-70mm T2.9 pic.twitter.com/PSGNmEhZPK— Aki 神戸ファインダー (@Aki_for_fun) June 12, 2020
正確で美しいフォーカシングが可能
シネマレンズは各種調整リングの回転幅が大きくなるように設計されています。このため微妙なフォーカシング調整が可能。ゆっくりとフォーカスしたり、狙った位置で正確にフォーカスを合わせることがしやすいです。
スチルレンズだと最近は距離目盛がなくて、どこからどこまで回せばいいか分からないものが多いんですよね。ちょっと回しただけでピント位置が大きく動いてしまうこともあってマニュアルフォーカスの難易度が高いです。
下の動画ではフォーカスリングを回して徐々に後ろの被写体にピントを合わせています。このように繊細なフォーカス調整が可能です。
フォーカシング
DZOFilmシネマレンズ Linglung 20-70mm T2.9 pic.twitter.com/N2dEsEWeyp— Aki 神戸ファインダー (@Aki_for_fun) June 12, 2020
シネマ機材を使いやすいレンズ設計
シネマレンズは基本的な構造がスチルレンズとは異なります。まず原則としてシネマレンズはマニュアルフォーカスです。つまり手動でフォーカシングします。AFができないと不便に感じるかもしれませんが、マニュアルで調整しやすいように設計されているので、上で説明したように正確で美しいフォーカシングを実現するわけです。
ほかにもシネマレンズならではの特徴があります。例えばシネマレンズはフォーカスリングやズームリングなどを回してもレンズの全長が変わりません。これはマットボックスをつけて運用するときなどに重要になります。
ほかにも各種リングには溝がついているのでフォローフォーカスを装着できるようになっています。フォーカスリングはもちろんズームリングも同様の構造なので、Nucleus Nanoのようなレンズコントロールシステムを用いれば直接リングに触れることなくフォーカスやズームを制御することが可能です。
フォローフォーカス
DZOFilmシネマレンズ Linglung 20-70mm T2.9
TILTA Nucleus-Nano Wireless Lens Control System pic.twitter.com/Qjb3fDCwge— Aki 神戸ファインダー (@Aki_for_fun) June 12, 2020
フォーカスブリージングが抑えられている
動画用に使うレンズで気になるのはブリージングです。フォーカスリングを回してピント面を移動させたときに画角が変化してしまう現象です。写真撮影で気にする人はあまりいないかもしれませんが、連続的な映像である動画の場合はあまり顕著なブリージングは不自然な印象を与えてしまいます。
シネマレンズはもちろん動画向けのレンズなのでブリージングが発生しにくいように設計されているものが多いです。DZOFilmのシネマレンズもブリージングはよく抑えられているようです。
ブリージング
DZOFilmシネマレンズ Linglung 10-24mm T2.9 pic.twitter.com/YOFec9r03M— Aki 神戸ファインダー (@Aki_for_fun) June 12, 2020
絞りリングがF値ではなくT値で表記されている
写真用のレンズはF値で絞りが表記されるのが一般的ですが、シネマレンズの場合F値とは言わずT値を記載します。これらは似たような概念ではありますが異なる意味を持ちます。
F値とは焦点距離を有効口径で割った値です。光が入ってくる量を計算しやすいように考えられた概念で、F値が√2倍となるごとに明るさは半分となります。
ただし実際にカメラのセンサーに届く光の量を計算するには焦点距離や有効口径の大きさを見るだけでは不十分です。なぜならレンズの透過性を無視しているからです。カメラ用のレンズは何枚ものレンズが組み合わされていて何度も光が反射しています。つまり普通は光が途中で減衰するわけです。
F値とは透過率100%を前提にした数字です。仮に同じF値でも実際の光の量はレンズによって異なることがあります。
一方で透過率を考慮して実際に入ってくる光の量をもとに計算されるのがT値です。より正確な明るさを表しています。シネマレンズでは慣習としてこのT値が表記されるようになっています。
例えば光学機器を開発・販売するシグマ社はスチル用とシネマ用で作っています。スチルレンズが「18-35mm F1.8 DC HSM」、シネレンズが「18-35mm T2」です。シグマはどちらのレンズも光学設計がまったく同じであると公表しているので、いずれのレンズも開放絞りはF1.8ですが、明るさを示すT値は2であると分かります。
DZOFilmのシネマレンズとポケシネ4Kで撮影してみた
DZOFilmのシネマレンズ「Linglung 20-70mm T2.9」や「Linglung 10-24mm T2.9」をポケシネ4K(BMPCC4K・Blackmagic Pocket Cinema Camera 4K)に装着して撮影してみました。
本山街園の薔薇↓
一部ゴーストが映っているカットもあります。広角ズームレンズの「Linglung 10-24mm T2.9」はフレアやゴーストが発生しやすいかもしれません。
外での撮影だったので可変NDフィルターをつけて撮影しました。使用したのはKenkoの可変NDフィルターです。フィルターが気軽に使えるのもDZOFilmのシネマレンズの良いところです。
カメラストラップの紹介動画でもDZOFilmのシネマレンズをつかって撮影してみました。正面からのカットが「Linglung 20-70mm T2.9」で撮影しています(俯瞰のカットは別カメラ)。
機材を使える時間が限られていたのであまりたくさんは撮影できなかったのですが、操作性も映りも質が良くてすっかり魅了されてしまいました。ちょっと後悔しているのはせっかくのシネマレンズなのだから24fpsで撮っておけばよかったと思っています(上の動画はいずれも30fps)。
公式のプロモーションムービー↓
DZOFilmのシネマズームレンズはおすすめか?
DZOFilmの「Linglung 20-70mm T2.9」と「Linglung 10-24mm T2.9」について使ってみた感想をお伝えします。
良いところ・魅力
- ズームできる(しかもパーフォーカル)
- T2.9と明るい
- マイクロフォーサーズマウント用
- 一般的なフィルターの取り付けが可能
- レンズがかっこいいので使いたくなる
残念なところ・欠点
- フリンジが気になることがある
- 広角だと樽型歪曲が見られる
- 付属の説明書が英語と中国語のみ
初めてシネマレンズを実際に使ってみて想像以上にとても楽しかったです。普段使っているスチル向けに作られたレンズとは様々な違いがあって、シネマレンズならではの魅力が多くありました。わたしの愛用しているBMPCC4Kとの相性も非常に良いと感じました。
これまではシネマレンズといえばスチルレンズの何倍もの値段がする高級なものなので実際に使ってみようと思うことはありませんでした。例えばSIGMAのスチルレンズ「18-35mm F1.8 DC HSM」は希望小売価格が108,000円であるのに対して、シネレンズの「18-35mm T2」は470,000円です。あるいはFUJINONのMK18-55mm T2.9(Eマウント用)は販売価格がおよそ45万円ほどです。
一方で今回紹介したDZOFilmのシネマレンズはT2.9と比較的明るいズームレンズでありながら、価格が約20万円弱と現実味のあるラインです。今回の試用を機にシネマレンズという選択肢を真剣に考えてもいいかもしれないと思うようになりました。
ただし、このレンズをおすすめするかというと悩むところです。すでに書いたようにわたしはシネマレンズはこの2本のレンズしか実際に使ったことがありません。そのため他と比較してどうかということがわかりません。なので安易に「おすすめですよ」と伝えるのはここでは控えたいと思います。
DZOFilmの「Linglung 20-70mm T2.9」と「Linglung 10-24mm T2.9」の大きな魅力は総合的に扱いやすいことにあります。シネマレンズ初心者のわたしでも特に困ることはありませんでした。ズームできるシネマレンズで、マイクロフォーサーズマウント用、一般的なフィルターの取り付けが可能、そして他社と比べて半額程度の価格という点は高く評価しても良いのではないでしょうか。
Linglung 20-70mm T2.9(フィート表示)|システムファイブ
Linglung 10-24mm T2.9(フィート表示)|システムファイブ
Linglung 20-70mm T2.9(メートル表示)|システムファイブ
Linglung 10-24mm T2.9(メートル表示)|システムファイブ
ちなみに単焦点であれば安価なシネマレンズがMeikeやSAMYANGなどのメーカーからも発売されています。
動画用レンズを探している人には『ムービーのためのレンズ選びGUIDE BOOK』を読んでみてください。シネマレンズも紹介されています。
YouTubeのレビュー動画も見てね
YouTubeにもこのシネマレンズを使ってみた感想についての動画をアップしています。YouTubeのチャンネル登録もぜひよろしくお願いします!
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