浮世絵展「俺たちの国芳 わたしの国貞」
神戸市立博物館にて特別展「ボストン美術館所蔵 俺たちの国芳 わたしの国貞」が開催されています。8月28日(日)まで。江戸後期・幕末の時代に活躍した浮世絵師・歌川国芳と歌川国貞の錦絵170件を鑑賞できます。
国芳と国貞って誰?
展覧会のタイトルになっている国芳と国貞は、江戸後期の人気浮世絵師、歌川国芳(1797~1861)と、歌川国貞(1786~1864)のことです。この二人は役者絵の巨匠・初代歌川豊国の門下で、江戸後期の錦絵黄金時代を築きました。
国芳は、当時日本でも大人気の「水滸伝」をテーマにした錦絵で一躍有名になりました。時代劇の一場面や妖怪が登場する怪異譚を大胆に力強く描いたものや、ユーモアあふれる戯画の分野で表現力を発揮。日本の漫画の原点とも呼ばれる作品を残しています。
国貞は、美人画や当時の歌舞伎役者を描いた役者絵の第一人者として名声を上げました。師匠の豊国の後を継ぎ幕末まで浮世絵界で活躍した偉大な絵師です。
展覧会の感想
Akiも行ってきましたので感想を書いてみます。
誰にでも分かりやすい大衆娯楽としての浮世絵
江戸後期の人気浮世絵師・歌川国芳と国貞の作品ということで、現代における芸術的な評価だけでなく当時の一般庶民にも愛された浮世絵の数々が展示されていました。
私は浮世絵や美術の専門知識はありません。しかし、時代劇のワンシーンや、町で暮らす女性の姿、当時の歌舞伎役者のブロマイド風絵画、さらには妖怪画など、芸術の知識がなくとも単純に見て楽しい作品が多くありました。
いくつか私が気に入った作品や、印象に残った作品をご紹介します。
歌川国貞 御誂三段ぼかし
現代のブロマイドとでも言うべき「役者絵」。つまり当時の歌舞伎役者の姿を描いた浮世絵です。役者絵だけでも数点の出展がありましたが、中でもこの作品はひときわ目を引きました。人物描写の丁寧さはもちろんですが、ポップな背景が印象的です。4つの鮮やかな色と華やかな模様を配しながら、下品にならず気品を感じさせます。
歌川国芳「水瓶砕名誉顕図」
戦国時代の武将、柴田勝家が持久戦をするより決死の覚悟で勝負を挑もうと貴重な水瓶を割って出陣した時の様子です。迫力ある絵で思わず柴田勝家に感情移入してしまいました。
あなたは国芳派?国貞派?
Akiは国貞の作品が特に気に入りました。素人なりに私が受けた印象としては、国芳の方が大胆で独創的。一方国貞は堅実で丁寧、美しい絵。
当時は国貞の方がその技術を高く評価されていたようですが、近年は国芳の方が人気のようです。確かに国芳の発想の柔軟さは素晴らしく、江戸時代とは感じさせない現代の人を楽しませる面白い絵を多く書いています。
歌川国芳 相馬の古内裏
画像の出典:Wikipedia がしゃどくろ
国芳の発想の柔軟さ、構図の大胆さを感じさせる一例がこちらでしょう。江戸時代の読み物で、将門没後の後日譚『善知鳥安方忠義伝【うとうやすかたちゅうぎでん】』(山東京伝著・1806年刊)の一場面。大宅太郎光国(画面中央)が、妖術を操る将門の姫君滝夜叉姫と対決するシーンです。原作では等身大サイズのガイコツが複数出現するところをこのように大胆な構図に描いています
歌川国貞 集女八景 粛湘夜雨
画像の出典:江戸ガイド
国貞は、当時の町に暮らす女性を描いた作品を数多く残しており、こちらの絵もその一つ。大雨の最中ボロボロの傘をさして買い物に出かけたようでずぶ濡れになっています。濡れてしまった着物の裾をしぼっている様子。
当時は遊女の絵を描くことに幕府から制限がかかっていたそうなのですが、そういったお達しをくぐり抜けながら、町人の姿を描きつつ艶やかな美人画を描いた一枚です。美人画といえば国貞と言われるのも納得の作品。
特別展「俺たちの国芳 わたしの国貞」の開催場所・日時
特別展「ボストン美術館所蔵 俺たちの国芳 わたしの国貞」
場所:神戸市立博物館
住所:神戸市中央区京町24
TEL:078-391-0035
開催期間:平成28年(2016)6月18日(土曜)~8月28日(日)
開館時間:9:30~17:30【土曜は19時まで】(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜[ただし、7月18日(月曜・祝)は開館]、7月19日(火曜)
アクセス:
JR「三ノ宮」、阪急「神戸三宮」、ポートライナー・地下鉄(山手線)・阪神「神戸三宮」から南西へ徒歩約10分
JR、阪神「元町」から南東へ徒歩約10分
地下鉄(海岸線)「旧居留地・大丸前」から南東へ約5分
博物館に駐車場はありません。お近くの有料駐車場をご利用ください。駐車場の場所はこちらのリンクの地図をご参考ください。
Web:特別展 ボストン美術館所蔵 俺たちの国芳 わたしの国貞 / 神戸市
地図 神戸市立博物館
神戸での展示が終わった後は名古屋で展示が行われます。
2016年9月10日(土)~12月11日(日)名古屋ボストン美術館
おすすめです!
当時の市民に愛された国芳・国貞の作品の魅力は現代の人々にも通ずるものがあります。浮世絵や美術の知識がなくても楽しめるのでぜひ足を運んでみてください。