神戸ファインダーをご覧いただきありがとうございます。Aki(@Aki_for_fun)です。富士フイルムのデジタル中判カメラ「GFX100 II」を数日お借りする機会を得ました。撮影した写真や動画を紹介しながら、「GFX100 II」で実際に撮影してみた感想をお伝えします。
機材はシステムファイブさんのキャンペーンに応募して使わせてもらいました。
参考:中判動画で行こう!FUJIFILM 中判ミラーレスカメラ GFX100 II お試し貸し出しキャンペーン – 新着情報 | SYSTEM5
撮影できたのは約4日と短い期間でしたが、なかなか使えない高級カメラで撮影する貴重な経験ができました!
1億画素の中判カメラ「FUJIFILM GFX100 II」
「FUJIFILM GFX100 II」は43.8mm×32.9mmのイメージセンサー「GFX 102MP CMOS II HS」と、画像処理エンジン「X-Processor 5」を搭載した一眼カメラです。2023年9月28日発売。
GFX100 II のセンサーサイズは「中判」(ミディアムフォーマット)というくくりに該当します。中判センサーと呼ばれるセンサーのサイズは多様ですが、富士フイルムのGFXシリーズは約44mm×約33mmのイメージセンサーを搭載しています。
一般的にカメラの画質はセンサーが大きいほど高画質になる傾向があり、GFX100 II のイメージセンサーは、他社のハイエンド一眼カメラが多く採用しているフルサイズセンサーの約1.7倍ほどの大きさです。
GFX100 II は富士フイルムのGFXシリーズのカメラの中で最上位に位置するフラグシップ機です。画素数はなんと1億2百万画素。近年の一眼カメラの多くはおよそ2000万~3000万画素で、高画素機でも5000万~6000万画素なので、まさに桁違いの数字です。
大きなイメージセンサーを搭載しているぶん、カメラボディやレンズは大型で、価格も他社のフルサイズカメラと比べて高めです。現時点でのカメラ量販店における販売価格は約114万円です(ボディ単体、税込み価格)。レンズもその多くが1本数十万円します。
表:カメラの主な仕様
製品名 | FUJIFILM GFX100 II |
---|---|
マウント | FUJIFILM Gマウント |
イメージセンサー | 43.8mm×32.9mm GFX 102MP CMOS II HSセンサー |
有効画素数 | 約1億200万画素 |
画像処理エンジン | X-Processor 5 |
手ブレ補正 | センサーシフト方式5軸補正 8.0段 |
EVF | 0.64型有機ELファインダー 約944万ドット |
液晶モニター | 3.2型 3方向チルト式 タッチパネル付き |
記録メディア | スロット1:CFexpress Type Bカード (~2TB) スロット2:SD/SDHC/SDXC カード (~2TB) UHS-I 及び UHS-II 対応 SSD外部接続対応 (~2TB) |
発売日 | 2023年9月28日(木) |
使用したレンズ
使用したレンズは以下の3本です。
- GF55mmF1.7 R WR
- GF80mmF1.7 R WR
- GF45-100mmF4 R LM OIS WR
フジノンレンズ GF55mmF1.7 R WR | レンズ | FUJIFILM X Series & GFX – Japan
フジノンレンズ GF80mmF1.7 R WR | レンズ | FUJIFILM X Series & GFX – Japan
フジノンレンズ GF45-100mmF4 R LM OIS WR | レンズ | FUJIFILM X Series & GFX – Japan
富士フイルムのGFXシリーズのカメラでGFレンズを使う場合、その画角をフルサイズで換算する場合は焦点距離を約0.8倍することで求められます。
レンズ | フルサイズ換算焦点距離 |
---|---|
GF55mmF1.7 R WR | 44mm |
GF80mmF1.7 R WR | 63mm |
GF45-100mmF4 R LM OIS WR | 36mm-79mm |
関連記事:センサーサイズと焦点距離・画角の関係性について | 神戸ファインダー
作例写真で見るGFX100 II の画質
GFX100 II で撮った写真を紹介します。はたして1億画素の中判センサーの画質はどのようなものなのでしょうか。撮る前は違いが分かるのかどうか気になっていたのですが、使ってみるとその画質は非常に素晴らしいもので、これまでわたしが使ってきたカメラの写真とは大きく異なるものでした。
1億画素の中判デジタルカメラは初体験!その実力を写真で見てみましょう。
動物写真でわかる精細さとトリミング耐性
まずは動物の写真です。撮影レンズは「GF45-100mmF4 R LM OIS WR」、フィルムシミュレーションは「REALA ACE」です。
GFX100 IIでハシビロコウを撮りました。パッと見ただけでも非常にきれいな写真だということは伝わると思いますが、わたしが特に衝撃を受けたのはこの写真の細部まで確認したときです。上の画像から赤枠の部分を切り取った写真をご覧ください。
ハシビロコウの羽やクチバシ、するどい眼光までとても克明に記録されていますよね。元の写真からごく一部分だけを大胆にトリミングしていますが画像の劣化が一切気になりません。堂々としたハシビロコウのたたずまいが伝わる迫力のある写真です。
こちらはオオハシの写真です。元の画像だと端のほうに人も写ってしまっているので、こちらも赤枠の部分で切り取って見ましょう。こんなに小さくトリミングして大丈夫なのか心配になりますが…
…とてもきれいに写っています!カラフルなクチバシの微妙なグラデーションもきちんと見えますし、目のまわりの微妙なシワ、白や黒の羽毛の細かい質感までよく伝わります。
お次はプレーリードッグの写真です。動物園ではなかなか近づいて撮影できないときもあります。今回お借りしたレンズのうち最も望遠で撮れる100mmでもこれが限界でした。これもトリミングしてみましょう。
プレーリードッグってこんなお顔をしていたんですね。つぶらな瞳や、小ぶりの耳、ヒゲや体毛など精細に記録されています。思ったよりも爪が鋭かったり、こうやって切り取って見て初めて発見できることもあります。
こちらは小さなお猿さんの「コモンマーモセット」です。木の上を機敏に動き回っていました。こちらも一部を拡大して見てみます。
耳のまわりの白いフサフサとした毛が特徴的!顔のまわりの産毛のような小さい毛から体を覆う体毛までよく描写されています。茶色い瞳がおしゃれですね。
以上のように1億2百万画素のイメージセンサーを搭載する「GFX100 II」は、細部までの精細な描写性能を有しています。トリミングしても画質の劣化が気にならないので、撮影後に落ち着てい構図を柔軟に調整することができます。
なおカメラの被写体検出機能に「鳥」があるので、オートフォーカスで自動で鳥を認識して撮影することができました。
自然風景でわかる質感・立体感の描写力
次に自然風景の写真です。
以下の写真はレンズが「GF45-100mmF4 R LM OIS WR」で、フィルムシミュレーションは「REALA ACE」です。
こちらは画角のほとんどが緑で埋めつくされています。この写真のすごいところはそれらの自然を明確に描き分けているところにあります。このように小さな葉っぱが密集しているようなシーンではカメラやレンズの解像力が問われます。性能が足りないと、前後左右の葉がごちゃごちゃになってしまいなんとなく雑然とした印象になってしまいます。
上の写真は基本的には緑ばかりですが、様々な種類の自然が写っています。例えば両サイドにある木々は桜ですが、右奥に見えるのは松の木です。拡大して見るまでもなく、それらの木々の葉の形や色の違いが明確です。この表現力は風景写真を撮るにあたってこの上ない強みと言えるでしょう。「GFX100 II」なら自分が目にした美しい自然風景の感動をそのまま写真で伝えることができます。
以下の写真は「GF80mmF1.7 R WR」で撮影しました。
こちらの木の写真は絞り開放のF1.7で撮りました。中判センサーらしく背景は大きくボケていて、そのボケも美しいです。またピント面はやはり素晴らしく精細で木の表面の苔の細かい質感がきちんと記録されています。
同じシチュエーションですこし絞ってF11で撮影したのが下の写真です。
よく被写体の立体感を表現するのに、背景のボケを利用する撮影手法がありますが、「GF80mmF1.7 R WR」の場合は非常にリアルに記録してくれるので、絞り込んでも手前の被写体の立体感がきちんと伝わります。ピント面が深くなったことで木の表面の質感もより詳しくわかるようになりました。
上の写真は川の水面を撮ったものです。太陽の光が当たっているところのきらめきが美しく感じてシャッターを切りました。こういった滑らかで透明感ある被写体においてもカメラの解像力や描写力は遺憾なく発揮されています。水面の微妙なゆらめきが如実に伝わる写真です。
1億画素センサーで解像度に余裕があるので、横長のアスペクト比の構図でも画質に余裕があります。かなり構図に融通がきくのは写真を撮っていて楽しいです。
夜景写真でわかる階調の美しさ
「GFX100 II」で撮影した夜景写真を紹介します。レンズは「GF55mmF1.7 R WR」、フィルムシミュレーションは「REALA ACE」です。
カメラは一般的に暗いところや、暗いところと明るいところの差が激しい場所の撮影が苦手です。なので夜景をきれいに撮るのはカメラの性能や、撮影のテクニックが大事になってきます。
さすがの「GFX100 II」は夜景写真でもその実力を十分に見せてくれました。上の写真はライトアップされた「BE KOBE」モニュメントです。暗い中に浮かびあがるモニュメントが美しく立体感あるように記録されています。きれいに見える秘訣のひとつは階調の滑らかさにあります。下の写真をご覧ください。
微妙な明るさの変化、グラデーションがきれいに出ているのがお分かりいただけるでしょうか。これはやはりカメラの性能が良いからこそ実現できることです。
こういう暗い中にまぶしく光るものはカメラで撮ると真っ白になってしまったり、微妙な色の変化を表現できずに階調が飛ぶトーンジャンプを起こしてしまうことが多いです。こういった繊細な明るさや色の変化をとらえることができるおかげで、夜景写真が美しく見えるわけです。
手振れ補正で手軽にスナップ
ほかにもスナップ感覚でいろいろと撮ってみました。レンズは「GF45-100mmF4 R LM OIS WR」です。
カメラとレンズの手振れ補正のおかげでスローシャッターで、歩行者だけをぶらしながら街並みをぶれずに撮ることができました。
上の二枚の写真のフィルムシミュレーションは「CLASSIC Neg」です。
手振れをおそれずに手持ちで気軽に撮れて楽しいです。
上の三つの写真のフィルムシミュレーションは「REALA ACE」です。
ポートレート写真も簡単に紹介します。レンズは「GF80mmF1.7 R WR」、モデルが筆者で、撮影は奥さんがしてくれました。
動画もすごい!8Kを内部記録できる
GFX100 II で動画撮影も試してみました。8K30Pの解像度をカメラで内部記録できます。
フィルムシミュレーション「ETERNA」で撮った8K映像をご覧ください。YouTubeの歯車マークから画質を8Kに設定できます。
カメラの操作性など撮影してみた感想
GFX100 II の操作性など、撮影中に感じたカメラの使い勝手についてお伝えします。
大きく重たいがレンズしだいでは軽快に
GFX100 II にEVFを装着して、バッテリーやメモリーカードを入れたときの重さがおよそ1,030gです。
業務用途として用いられることの多いプロフェッショナル向けカメラですが、富士フイルムはより幅広いユーザーに使ってもらえるようにGFXシリーズの開発を進めており、なかでも小型化にこだわっています。実際のところ、GFX 100 II は前機種 GFX 100 から大幅にサイズダウンしています。GFX 100 は縦位置グリップと一体化した構造でした。
中判サイズとはいえカメラだけを見ると、フルサイズの上位モデルと同じような感覚で扱えると感じました。特に単焦点レンズの「GF55mmF1.7 R WR」や「GF80mmF1.7 R WR」などとの組み合わせでは軽快に撮影を楽しめました。
ただし「GF45-100mmF4 R LM OIS WR」はレンズ単体で1,005gほどあるので、この組み合わせになると総重量が2kgを超えます。こうなるとさすがに重たく、大型で重量級の機材という印象でした。
ファインダーやモニターは良好!
GFX100 II はファインダーを脱着できる構造です。
交換式ファインダー「EVF-GFX3」(本体に同梱)は見やすく、快適でした。
筆者が使用したときは、常時絞りプレビューでした。被写界深度が分かりやすくて便利でしたが絞りを変えたときにファインダー内がちらつくのが少し気になりました(設定で変えられるのかもしれませんが、そこまでは調べられませんでした)。
またわたしは利用できませんでしたが「EVFチルトアダプター EVF-TL1」(別売り)を組み合わせれば、横位置撮影時で0°〜90°、縦位置撮影時で-45°〜+45°の範囲でEVFの装着角度を可変することができます。使用しているところを見たのですが、便利そうで良い仕組みだと思いました。
モニターはチルト式で、横位置でも縦位置でも見やすくて快適でした。
サブ液晶モニターは大きくて、様々な情報を確認できて便利です。
データの重さがネック
RAWで撮影していると写真一枚あたりの容量がおよそ200MBあります(非圧縮の場合)。1億画素のサイズなので仕方ないところではあると思いますが、いかんせんデータが重たく感じます。
普段わたしはキヤノンのEOS Rでは軽量のRAWデータで撮影していて、写真一枚でせいぜい20MBほどなのでこの容量の差は大きく感じました。パソコンでRAW現像するときも、処理に時間がかかっていたので、このカメラを使うとなるとデータの保管や編集の環境もアップグレードが必要そうです。
データの転送という観点では、CFexpressTypeB が高速データ通信できて便利でした。記録メディアは大容量のものを用意したほうが良いでしょう。
そのほか
オートフォーカス性能はわたしの撮影シーンでは特に困らずふつうに頼れる性能だと感じました。キヤノンやソニーの最近のAF性能には及ばないものの、十分使えるAFだと思います。
被写体認識はきちんと機能しており、人物の顔や瞳、あるいは犬、猫、鳥などの動物を適切に認識してくれました。
バッテリーはひとつだけで予備がありませんでしたが、モバイルバッテリーで充電しながら使えば一日撮影することができました。
24度くらいの屋外環境でしばらく写真を撮っていると、カメラの温度が上がっているという注意報が出ました。そこまで厳しい環境ではないと思ったのですこし不安になりました。撮影に特に支障はありませんでした。
公式ウェブサイト:FUJIFILM GFX100 II | カメラ | FUJIFILM X Series & GFX – Japan