シグマの中望遠ズームレンズ「SIGMA 50-100mm F1.8 DC HSM Art」をレビューします。F1.8通しの上質なレンズです。キヤノンEFマウント用レンズを実際につかって撮影してみた感想をお伝えします。
神戸ファインダーをご覧いただきありがとうございます。Aki(@Aki_for_fun)です。
SIGMA社様のご好意で一眼カメラ用交換レンズの「SIGMA 50-100mm F1.8 DC HSM Art 」をお貸出しいただきました。特にレビュー依頼を受けたわけではなく単純にわたしが使ってみたいレンズだったのでこちらからお願いしてお借りしたのですが、せっかく実写の機会を得て約1ヶ月たくさん撮影させてもらったのでレビュー記事を書くことにしました。
「50-100mm F1.8 DC HSM Art」は非常に優れた描写性能と評判のレンズです。わたしはシグマの同じくArtラインのレンズである「18-35mm F1.8 DC HSM ART」を愛用しているので、「50-100mm F1.8 DC HSM Art」にも期待してレンズをお借りしました。
SIGMA 50-100mm F1.8 DC HSM Artの主なスペック
レンズのスペックを確認しておきましょう。
SIGMA 50-100mm F1.8 DC HSM Artの仕様・概要
レンズ構成枚数 | 15群21枚 |
---|---|
画角 (DC) | 31.7° – 16.2° |
絞り羽根枚数 | 9枚 (円形絞り) |
焦点距離 | 50mm〜100mm |
開放絞り | F1.8(ズーム全域でF1.8通し) |
最小絞り | F16 |
手振れ補正 | なし |
最短撮影距離 | 95cm |
最大撮影倍率 | 1:6.7 |
フィルターサイズ | φ82㎜ |
最大径 × 長さ | φ93.5mm × 170.7mm |
質量 | 1,490g |
対応マウント | キヤノンEFマウント用 ニコンFマウント用 シグマSAマウント用 ※APS-C用 |
公式ウェブサイト | 50-100mm F1.8 DC HSM | Art | プロダクト | レンズ | SIGMA GLOBAL VISION |
スペックシートを見るだけでもこのレンズのユニークさが際立ってきます。特に注目すべきは焦点距離50mm〜100mmでF1.8通しを実現しているところでしょう。なかなか他のレンズにはない特徴です。APS-Cサイズの一眼カメラ用に設計されており、フルサイズのカメラでは周辺が黒くけられてしまうのでその点は注意が必要です。
美しいデザイン・上質な操作性
まずはレンズの外観や操作性について。SIGMAのArtラインは真っ黒なデザインで高級感があります。「SIGMA 50-100mm F1.8 DC HSM Art」は特にサイズが大きいので重厚感もあります。
ズームリングの動きは重ためで、動画撮影でのスムーズなズーミングに向いています。一方でスピーディーに画角を変えたいときはこのズームリングがすこし不便に感じました。
ピントリングの使い心地は良好です。普段はオートフォーカスでの運用でしたが、マニュアルでのフォーカシングも無難にこなすことができました。
レンズに手振れ補正機能はありません。
レンズの長さはフードなしで約17cm。インナーズームなのでズーム全域でレンズの長さは変わりません。重さは約1490g。大型で重量級のレンズです。
「SIGMA 50-100mm F1.8 DC HSM Art」はAPS-Cサイズの一眼カメラ用レンズですが、どちらかというと大きめのカメラボディに似合います。キヤノンならEOS 7D MarkⅡやEOS 90Dなどが特に相性が良さそうです。わたしはマウントアダプターをつかってフルサイズのEOS Rに取り付けたときがしっくりくるように感じました(クロップされるもののEOS Rでも使うことは可能)。
重たいレンズですが三脚座が付いているので三脚に載せてもバランスをとることができて安定感があります。また三脚座のリングを回転させることで横構図と縦構図の入れ替えも簡単です。
シグマのArtレンズには「SIGMA 50-100mm F1.8 DC HSM Art」の兄弟のような位置付けのレンズとして「SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM Art」があります。せっかくなので並べてみました↓
デザイン的にも光学性能的にもよく似たふたつのレンズですがやはり「SIGMA 50-100mm F1.8 DC HSM Art」のほうが大きく重たいです。
「SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM Art」は個人的に大好きなレンズでレビューも書いています。
参考:SIGMA 18-35mm F1.8 Art 購入レビュー|写真が上手くなったと勘違いできるレンズ
実写レビュー
「SIGMA 50-100mm F1.8 DC HSM Art」の魅力はなんといってもその描写力。このレンズで撮影した作例写真をお見せしながら「SIGMA 50-100mm F1.8 DC HSM Art」の描写性能についてレビューします。
各写真の下に撮影時の設定や、Flickrへのリンク(オリジナルサイズの写真)を載せているのでそちらもご参照ください。
動物園での撮影に最高かもしれない
神戸私立王子動物園に撮影に行ってきました。キヤノンのミラーレス一眼カメラEOS Kiss MにマウントアダプターEF-EOS Mでレンズを装着して撮影。個人的にこのときの撮れ高にとても満足しました。
この気持ちよさそうに泳ぐアシカの写真好きなんですよね。自分で撮った写真を自分でほめて恐縮なんですがアシカは優美に感じられるし、波打つ水面も繊細なところまできっちりと描写されていてお気に入りです。良いレンズで撮った写真は大きなディスプレイで眺めていたくなる写真です。
せっかくのF1.8通しズームレンズなので開放で撮ってみました。背景がボケてアムールヒョウの端正な顔が際立ちます。しかも開放なのにピントの合ったところは非常にシャープです。拡大して見るとその描写力がよくわかります。
ここまでクロップして写真を観賞することはあまりないかもしれませんが、拡大して細かいところまで写っていると写真全体を見たときの印象もやっぱり良いものなんですよね。絞りを開いて撮ると描写が甘くなってぼんやりした印象になるレンズが多いのですが「SIGMA 50-100mm F1.8 DC HSM Art」は安心して開放で撮ることができます。
この白フクロウの写真は下の写真から切り出したものです。これだけきちっと写ってくれるなら積極的にクロップして構図を考えるという楽しみ方もありかもしれません。
また絞りを開くことができることには背景がボケる以外にも大きなメリットがあります。例えば次の写真を見てください。
動物園では普通オリの中に動物がいますよね。なので撮影しようとすると柵越しにカメラを構えることになり、写真に柵が写りこんでしまいます。こういうときは絞りを開いて撮ってみましょう。同じ場所でF1.8で撮ったのが下の写真です。
いかがでしょうか。このようにすると柵が目立たなくなります。完全に消えたわけではありませんが言われなければ柵があることはたぶん気づかないと思います。絞りを開くことで前ボケが大きくなり、結果として手前の柵が見えにくくなっているわけです。動物園の撮影ではこのように絞りを大きく開くことのできるレンズはとても便利で活躍してくれます。
重たくてもスナップに持ち出したくなる
京都の嵐山まで出かける機会がありました。わたしの住む神戸市からはすこし距離がありますが、ぜひこのシグマのArtレンズの性能を見てみたいと思って、重たい荷物を背負っていくことにしました。たくさん写真を撮ったのですがやっぱりこのレンズの性能には惚れ惚れとしてしまいます。
紅葉を逆光気味に撮影。光がすけてきれいに見える絶好の被写体です。こういう被写体はおいしい反面、レンズにとっては厳しいシーンでもあり偽色がのりやすいです。つまり葉っぱのふちなどに本来は見えないはずの紫っぽい色や緑っぽい色が出てくることがあります。パープルフリンジなんて呼ばれることもある現象ですね。
安物のレンズだとそういった色が見えてしまい美しさを損なってしまうのですが、そこはさすがシグマのArtレンズです。まったく問題ありません。
レンズの性能を見るためにもう少し意地悪な被写体を選んでみました。下の写真をご覧ください。
レンズレビューでありがちな開いた書籍の写真です(神戸の異人館「うろこの家」で撮影)。こういう被写体を撮るとピントのあった部分の手前と奥に偽色がのることが多いです。拡大して確認しましょう。
いかがでしょうか。よく見ると手前がマゼンタ系の赤っぽい色に、奥を見るとわずかに緑っぽい色になっていますね。といってもここまで拡大してわずかに確認できる程度です。偽色はよく抑えられていると言って良いでしょう。
これだけレンズ性能が優れているとスナップが楽しくなってどんどんと撮影してしまいます。
たくさん写真を撮りましたが、歪みや周辺減光も目立たず気になりませんでした。
中望遠で明るいレンズなので人物を撮るのにもぴったりです。ブログ用にポートレートを撮ることがないのであまり作例を見せられなくて申し訳ないのですが、このレンズで撮る人物撮影は素晴らしいですよ(小さい子どもたちの写真をたくさん撮ったのですが最高でした)。
以下の写真は神戸市消防出初式にて。
夜景撮影にも向いている
明るいレンズなので夜景撮影にもぴったりです。
とりあえず背景に玉ボケつくってみたかっただけの写真です↑
金属の質感の出方も好みでした。かっこいい。
三脚を使っての撮影にも挑戦しました↓
レンズに三脚座が付属しているので使いやすかったです。
同じ写真をモノクロで現像してみたのですが、ハードめにモノクロで見せるのも楽しいですね↓
最大の欠点は不安定なAF
「SIGMA 50-100mm F1.8 DC HSM Art」のデメリットの話もしましょう。
残念なことにオートフォーカス(AF)が安定しませんでした。AFの精度が悪いというよりはそもそもAFがうまく作動してくれないというシーンが何度かありました。キヤノンのカメラでAFを使っているとピントが合った時は合焦ポイントの四角いマークが緑色や青色になるのですが、このレンズを使っているとそれが赤色になってなかなかAFが機能してくれないのです。
常にAFが機能しないということでもありません。普段はふつうにオートでピントを合わせてくれるのですが、不調になるといつもならピントの合うような場所でもぜんぜんAFが効きません。ピントが合いにくい被写体というわけでもなく突然AFがまともに使えなくなります。
カメラとの相性問題も考えたのですが、EOS Kiss X9、EOS Kiss M、EOS Rの3種類のカメラで試してどのカメラでも同じ現象が起こりました。やはりレンズ側の問題だと思います。
ほかの人のレビューでも「SIGMA 50-100mm F1.8 DC HSM Art」のAFの不調について聞いたことがあったのですが、なるほどと思ってしまいました。これは残念です。同じシグマレンズでも「18-35mm F1.8 DC HSM Art」のほうはAF機能も良好だったのですが、「50-100mm F1.8 DC HSM Art」についてはAFを信頼できません。
ほかにあまり欠点らしい欠点は見当たらないのですが、強いて言えばカリカリシャープ系でふんわりやわらか系ではないタイプのレンズです。現代的な優秀レンズと言って良いかもしれません。
またレンズが大きくて重たいのも人によってはデメリットに感じることでしょう。質量約1490gです。中望遠レンズでこんなに重たいレンズは他になかなかありません。
総評 大きい重たい。だけど使いたいレンズ。
「SIGMA 50-100mm F1.8 DC HSM Art」は映りが良いのでとにかく使いたくなるレンズです。開放F1.8から安心して使える性能で、しかも50mm〜100mmのズームレンジで画角のつかいわけが可能。描写能力だけ見れば単焦点レンズのようでありながらズームできてしまうすごいレンズです。使う前はレンズが大きすぎないか不安だったのですが、これだけの性能があると重たかろうが使いたくなりますね。
惜しむらくはAF機能が安定しないところ。レンズを信頼しきれないのが残念です。マニュアルフォーカス(MF)で運用しても良いのですが、MFのレンズとなるとほかにも単焦点レンズで描写力の良いものがあるので魅力がすこし落ちてしまいます。個人的にはある程度MFでの運用も覚悟できる人にのみこのレンズをおすすめします。MFにして動画撮影で使うのもありですね。
「SIGMA 50-100mm F1.8 DC HSM Art」はAPS-C専用ではありますがカメラとセットで買えるキットレンズなどとは格の違いがはっきりしています。中望遠の画角で明るいレンズがほしい人には有力な選択肢です。50mm〜100mmの焦点距離でF1.8が使えるレンズは貴重です。50mmや70mm、85mm、105mmなどの単焦点レンズがひとつにまとまっていると考えるとお得で、とても便利ですよね。AF性能の欠点が気にならない人には強くおすすめできるレンズです。
お買い物・価格確認リンク表
SIGMA 50-100mm F1.8 DC HSM Art | |||||||
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作例写真まとめ
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