望遠レンズの特徴と撮影テクニックについて作例写真を見せながら解説します。実は望遠レンズだからこそ撮れる写真がたくさんあるんです。遠くのものを撮るだけではなく、圧縮効果や大きなボケを活かした写真表現ができます。望遠レンズを使いこなせるようになるとカメラがもっと楽しくなりますよ!
神戸ファインダーをご覧いただきありがとうございます。Aki(@Aki_for_fun)です。望遠レンズ使ってますか?私は「遠くのものを撮る機会は少ないし要らないかな」なんて考えてたことがあるのですが、いざ使ってみると楽しくて仕方ないです。望遠レンズの魅力について、その特徴や扱い方について作例写真とともにお伝えします。
※写真の下に撮影の設定を記載しています。焦点距離でカッコ内の数字はフルサイズ換算(35mm判換算)のおよその数値です。
望遠レンズの特徴・利点と撮影方法
望遠レンズは他のレンズと違ってどのような特徴があるのか。そしてその特徴を利用してどんな写真が撮れるのかをみていきましょう。
遠くのものを大きく撮る
望遠レンズの特徴は、まず遠くのものを大きく撮れるということです。遠くを望むというまさに名前の通りですね。
例えば次のような野鳥の写真も望遠レンズならでは。遠くに離れた小鳥も望遠レンズを使えば大きく映し出し、その羽毛などの質感もわかるくらいの写真を撮ることができます。
焦点距離200mm(320mm) F4.0 SS1/640 ISO200 住吉川(神戸市東灘区)にて
このカワセミの写真は近所の川沿いをカメラを持って散歩しているときに撮りました。「こういう野生動物の写真を撮るのは難しいのかな」と思っていましたが意外と簡単でした。
春に人気の被写体が梅の花にやってきた小鳥のメジロ、通称「ウメジロー」です。これも望遠レンズを使うことで木々の高いところにいるメジロを大きく撮れます(参考:梅とメジロ「ウメジロー」の撮影方法・コツまとめ)。
焦点距離121mm(192mm) F4.0 SS1/500 ISO100
望遠レンズがあれば月も大きく撮れます(下の写真は望遠レンズで撮ってそこからさらにトリミングで拡大しています)。
焦点距離200mm(320mm)※トリミング有り F8.0 SS1/50 ISO100
月ってこんな模様なんですね。知ってるようで意外とよく知らなかったのでちょっとした発見でした。
こんなアップの写真も撮れちゃいます。
焦点距離200mm(320mm) F4.0 SS1/125 ISO400 神戸どうぶつ王国にて
動物園でレッサーパンダを撮りました。望遠レンズのおかげでトリミングなしでこんな面白い写真が撮れました。
圧縮効果で驚きの構図をつくる
望遠レンズの二つ目の特徴は「圧縮効果」です。圧縮効果とは、写真の前景と背景の距離がぐっと近づいて感じられるようになる、ということ。
写真を例に見てみましょう。
まずは焦点距離45mmで撮影した写真です。
焦点距離45mm(72mm) F11 SS1/125 ISO100
大阪の桜ノ宮で撮りました。桜と川の写真ですが右奥に大阪城が見えるのにお気づきでしょうか。遠くのほうに小さくお城が見えます。
次に焦点距離70mmで撮影した写真。
焦点距離70mm(112mm) F22 SS1/100 ISO640
すこし大阪城が大きく見えるようになりました。先ほどの写真と見比べてください。どちらも同じ橋から撮影しているのですが手前の桜と大阪城の距離感が縮まっているように感じると思います。
次に思い切って焦点距離150mmで撮影した写真です。
焦点距離150mm(240mm) F16 SS1/250 ISO500
ずいぶんと大阪城の見える姿が大きくなりました。これも同じ橋から撮影しているので、撮影している自分とお城との距離感はほとんど変わっていません。でもこの望遠150mmで撮影した写真を見ると大阪城がだいぶ近くにあるように見えますよね。これが圧縮効果です。
ちなみに大阪城にピントを合わせると次のような写真になります。
焦点距離200mm(320mm) F32 SS1/250 ISO2000
これは望遠200mmで撮影しています。こんなふうに距離感を縮めることで写真の主題を整理したり、面白い構図をつくることができるのが望遠レンズのメリットのひとつです。最初の45mmで撮影した写真と比べるとまったく違った写真になりましたよね。単純に被写体を大きく撮るだけでなく、近くにあるものと遠くにあるものを一枚の写真にフレーミングするのがポイントです。
他にも圧縮効果を利用した作例写真を見てみましょう。例えばこちら。
焦点距離160mm(256mm) F4.0 SS1/640 ISO100 神戸の桜のトンネル
圧縮効果で距離感を縮めることで桜並木の桜がぎゅっと詰まったように見えます。奥に続く桜のトンネルの印象が強まります。
圧縮効果は人の混雑や賑わいを見せるのにも利用できます。
こちらは神戸・元町商店街の様子。
焦点距離200mm(320mm) F4.0 SS1/250 ISO2500
背景を大きくぼかす
望遠レンズの3つ目の特徴は、背景ボケが大きいです。ボケが大きくなる条件はF値、被写体とカメラや背景の距離、焦点距離など。焦点距離が長いほどボケが大きくなります。
焦点距離200mm(300mm) F4.8 SS1/240 ISO200
上の写真はF4.8とそんなにF値は低くありませんが大きく背景がボケてくれました。さらに前ボケもいれたので奥行きがありつつ、被写体のサギが浮き立って見えます。
焦点距離90mm(144mm) F2.8 SS1/125 ISO100
こちらは90mmの中望遠で絞りがF2.8。背景のイルミネーションがボケてきれいな玉ボケがたくさんできました。このような写真も望遠撮影ならでは。
ここまでのまとめ
望遠レンズの特徴は①遠くのものを大きく写せる、②圧縮効果で近くのものと遠くのものの距離感を縮められる、③ボケを大きくできる、でした。これらの特徴を意識して撮影することで面白い写真が撮れます。
望遠レンズが活躍する撮影シーン・用途
望遠レンズの特徴や撮影方法がわかったところで、具体的にどんな撮影シーンで望遠レンズが活躍するのか、おもな撮影ジャンルをチェックしてみましょう。
動物撮影
近くになかなか寄れない野生動物も望遠レンズがあれば遠くから撮影できます。
港のカモメさん。
焦点距離200mm(320mm) F4.5 SS1/640 ISO100 神戸ハーバーランド前にて
カモさん。子どもでホワホワの毛がかわいい。
焦点距離90mm(144mm) F4.0 SS1/200 ISO100
野生だけでなく動物園の撮影でも望遠レンズは活躍します。
トラさん。
焦点距離190mm(285mm) F4.8 SS1/750 ISO200
望遠レンズで撮ると猛獣もかわいく見えます(関係ない)。
カピバラさん。ボケ味もきれいでお気に入りの一枚です。
焦点距離155mm(248mm) F4.0 SS1/800 ISO100 神戸市立王子動物園にて
キリンさん。
焦点距離85mm(136mm) F8.0 SS1/400 ISO100 神戸市立王子動物園にて
背の高い動物も望遠レンズを使うことでこうやって頭の部分だけ写真で切り抜くこともできます。
乗り物撮影
自動車・飛行機・船などの撮影も望遠レンズが定番です。
焦点距離180mm(288mm) F8.0 SS1/250 ISO200
この自動車の写真も望遠レンズだからこそ歩道からでも撮れました。広角レンズでこれと同じような構図の写真を撮ろうとすると道路に出て車の近くまで行くことになるので危険です。
遠くに離れた航行中の船の写真も撮れます。
焦点距離135mm(216mm) F11 SS1/250 ISO100
焦点距離119mm(190mm)※トリミング有り F5.6 SS1/200 ISO100
あとは飛行機を撮る人も多いですね。例えばこんな一枚。
焦点距離97mm(155mm)※トリミング有り F11 SS1/160 ISO100
飛行機が飛んでいたのでとっさに撮りました。これも圧縮効果を利用して飛行機と一緒に桜を前景に入れています。
イベント・ポートレート撮影
ステージやスポーツ観戦などのイベントの場合、決まった場所から撮影しなければならないので被写体と距離が遠いことが多いです。
例えば私は相撲観戦に行ってきました。安いイス席なのでかなり後ろの方からの観戦でした。
焦点距離18mm(29mm)F5.6 SS1/40 ISO320 大相撲大阪場所にて
座席からの見た目はだいたいこんな感じ。
それでも望遠レンズを使えば土俵の上の力士の取り組みもばっちりです。
焦点距離200mm(320mm) F4.0 SS1/250 ISO2500 大相撲大阪場所にて
このようにイベントなどで少し離れた場所に被写体があるときは望遠レンズが活躍します。
焦点距離135mm(216mm) F5.6 SS1/250 ISO1250 こうべ海の盆踊りにて
例えば運動会や音楽発表会で遠くの我が子を撮影したい!なんてときにも望遠レンズはおすすめです。学校行事を控えているときは前もって望遠レンズを用意しておくといいですよ。
また望遠レンズは背景が大きくボケるのでポートレート撮影でも人気が高いです。特にフルサイズで70〜135mmくらい(APS-Cで50〜90mmくらい)の中望遠がポートレート用によく用いられています。
こちらは湊川神社節分神事の際の剣の舞の写真。
焦点距離150mm(240mm) F4.0 SS1/200 ISO3200 湊川神社にて
背景がボケると人物が際立ってきれいに見えますよね。
焦点距離160mm(256mm) F4.0 SS1/250 ISO160 湊川神社にて
焦点距離50mm(80mm) F2.8 SS1/640 ISO100 神戸よさこい祭りにて
スナップ・風景撮影
望遠レンズは気軽なスナップには向いていないと思っていませんか?いいえ、決してそんなことはありません。望遠レンズをカメラにつけて出かけると楽しいです。
焦点距離75mm(120mm) F4.0 SS1/160 ISO100 神戸メリケンパークにて
これは望遠レンズの圧縮効果を利用したスナップです。記念撮影スポットで撮影している人たちと、その順番を待っている人たちを撮っています。順番待ちの人たちは少し離れたところから見ているのですが、望遠レンズを使うことで大勢の人が近くでその様子を見守っているかのような印象になりました。
おそらくスナップや風景撮影で使いやすいのは焦点距離70mm〜135mmくらい(APS-Cで50〜90mmくらい)の中望遠です。
次の夜景風景は56mm(フルサイズ換算約90mm)です。明るいところをぎゅっと切り取りました。
焦点距離56mm(90mm)HDR撮影 神戸ポートタワーより神戸の都市夜景
次の写真は90mm(フルサイズ換算約144mm)。
焦点距離90mm(144mm) F2.8 SS1/400 ISO3200 神戸・南京町にて
モノクロスナップも撮ってみました(設定が分からないけど望遠レンズ使ってます)。
ここまでのまとめ
望遠レンズは動物撮影や乗り物撮影で定番のレンズです。イベントの際で被写体と距離があるときも便利。望遠レンズは単純に遠いものを撮るだけでなく、その描写性能を活かしてポートレートやスナップ、風景撮影など幅広く使うことができます。
望遠レンズの選び方
ここまで見たら望遠レンズ使うっきゃないですね。まだ望遠レンズを持っていない人向けにレンズの選び方も解説しておきます。
望遠レンズを選ぶうえで考慮する主なポイントは次の通り。
- 焦点距離
- F値
- 手ぶれ補正(流し撮りモード)
- オートフォーカスのスピード・精度
焦点距離がいくつからいくつまで必要かをまず決めなければなりません。言い換えればどれくらいの距離感の被写体を撮りたいかです。定番で日常的な撮影に使いやすいのは70〜200mmくらい(APS-Cなら50〜135mmくらい)の焦点距離。これくらいあればスナップにも使いやすく、圧縮効果を利用した撮影も可能です。野生動物のようなもっと遠くのものを撮影するときは最低300mmくらいの焦点距離が欲しくなります(APS-Cなら200mmくらい)。
F値は小さくできた方がよりボケを大きく作れます。またF値が小さいと速いシャッタースピードにできます。ポートレート撮影をしたい人や、暗いところでの撮影、室内スポーツの撮影をしたい人はできるだけ小さいF値のレンズを選んだ方が良いです。
基本的に望遠撮影は手ぶれしやすいので手ぶれ補正は必須といえるほどの機能です。できるだけ手ぶれ補正付きのレンズをおすすめします。
動きものを撮影するならオートフォーカス(AF)のスピード・精度も大事です。基本的にはカメラメーカー純正で新しい設計のレンズがAF性能に優れている傾向にあります。メーカー純正というのはキヤノンならキヤノン製レンズ、ニコンならニコン製レンズという意味です。
ダブルズームキットは選ぶ価値あり
最も定番なのはカメラと一緒に買えるダブルズームキットの望遠レンズです。このキットレンズは決して悪いレンズではありません。もしすでにお持ちならそのレンズでどんどん撮影を試してみてください。
レンズキットを買わなかった人でも、バルク品なら安く買えます。バルク品とはもともとカメラとセットで売られていたレンズを別売りにしたもの。未使用の新品でも正規のパッケージではないので中古価格で安く売られていることが多いです。
とりあえず望遠レンズがどのようなものか知りたい人にはカメラとセット売りされている望遠レンズがとてもおすすめです。
代表的なコスパ良好な望遠ズームレンズを次の表にまとめました。いずれもAPS-C専用レンズです。
お買い物・価格確認リンク表
メーカー | 製品名 | Amazon | 楽天市場 | Yahoo! | カメラのキタムラ |
---|---|---|---|---|---|
キヤノン | EF-S55-250mm F4-5.6 IS STM | Amazon | 楽天市場 | Yahoo | カメラのキタムラ |
キヤノン | EF-M55-200mm F4.5-6.3 IS STM | Amazon | 楽天市場 | Yahoo | カメラのキタムラ |
ニコン | AF-P DX NIKKOR 70-300mm f/4.5-6.3G ED VR | Amazon | 楽天市場 | Yahoo | カメラのキタムラ |
ニコン | AF-S DX NIKKOR 55-300mm f/4.5-5.6G ED VR | Amazon | 楽天市場 | Yahoo | カメラのキタムラ |
ソニー | E 55-210mm F4.5-6.3 OSS | Amazon | 楽天市場 | Yahoo | カメラのキタムラ |
高倍率ズームレンズも便利
望遠レンズは試したいけれどレンズの交換が大変と感じる人には高倍率ズームレンズがおすすめです。
例えば有名なのはタムロン(TAMRON)の「18-400mm F3.5-6.3 DiII VC HLD」。一本のレンズで広角18mmから望遠はなんと400mmまで対応できてしまう便利レンズです。
代表的なコスパ良好な高倍率ズームレンズを次の表にまとめました。いずれもAPS-C専用レンズです。
お買い物・価格確認リンク表
製品名/ショッピングサイト | Amazon | 楽天市場 | Yahoo! | カメラのキタムラ |
---|---|---|---|---|
EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS USM | Amazon | 楽天市場 | Yahoo | カメラのキタムラ |
EF-M18-150mm F3.5-6.3 IS STM | Amazon | 楽天市場 | Yahoo | カメラのキタムラ |
TAMRON 16-300mm F3.5-6.3 DiII VC PZD MACRO B016E | Amazon | 楽天市場 | Yahoo | カメラのキタムラ |
TAMRON 18-400mm F3.5-6.3 DiII VC HLD | Amazon | 楽天市場 | Yahoo | カメラのキタムラ |
おすすめ望遠レンズ紹介
キヤノン用の望遠レンズをいくつか紹介します。
EF-S55-250mm F4-5.6 IS STM
先ほども紹介したダブルズームキットの望遠レンズ。APS-C専用でF値が暗いという弱点はあるものの、小型軽量で55〜250mmという幅広い焦点距離をカバーできるのが魅力です。運動会や動物園の撮影など明るい野外での撮影ならおおいに活躍します。値段も安いのでコスパではこのレンズが最高。
EF70-300mm F4-5.6 IS II USM
フルサイズ対応の望遠レンズ。価格・性能のバランスがよく、よほど厳しい撮影環境でなければこのレンズはかなりおすすめ。300mmとかなり遠くまで撮ることができます。しかも映りが良くてこのあと紹介するLレンズにも遜色ないです。キヤノン良いレンズ作ったな、と思います。
EF70-200mm F4L IS USM
私が使っている望遠ズームレンズです。フルサイズ対応のLレンズ。防塵防滴で、F4通し、手ぶれ補正付きの高性能レンズです。発売から時間が経っていることもあって中古で安く売られているのを見つけやすいです(私も中古で購入しました)。
EF70-200mm F4L IS II USM
先ほど紹介したレンズの新型です。より写りが良くなっています。旧型は手ぶれ補正のモーター音がすこしうるさいのですが新型は静音になりました。
EF70-200mm F2.8L IS Ⅲ USM
よりこだわるならこの望遠ズームレンズ。高額にも関わらず非常に人気の高いレンズです。F2.8通しの明るいレンズでポートレートやスポーツ、風景撮影などなんでもこなす望遠レンズの王様です。
旧型でも優れた性能なのでコスパよくレンズを手に入れるならII型のレンズもおすすめ。
まとめ 望遠レンズを使いこなしてカメラを楽しもう
今回は望遠レンズの魅力について書かせてもらいました。望遠レンズをまだあまり使ったことがない人はとても楽しいのでぜひカメラに取り付けて撮影に出かけてみてください。新しい世界が見えてきますよ(^^)
私の使っている望遠レンズは「買って大正解!キヤノン望遠レンズEF70-200 F4L IS USM購入レビュー」で紹介しています。
広角レンズもとっても面白いです!
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