神戸ファインダーをご覧いただきありがとうございます。Aki(@Aki_for_fun)です。夜景の上手な撮り方についてよく尋ねられるのでまとめました。
例のごとくちょっと長めの記事です。ブックマークしてあとで読めるようにしておくと便利かもしれません。
夜景写真 構図の基本とアイデア
まず夜景撮影の構図の考え方を抑えましょう。特に正解があるわけではないので構図のアイデアをいくつか提案します。
構図の基本
夜景をなぜ美しいと感じるのか。それはやはり暗闇の中に浮かぶ明かりがきれいだからでしょう。つまり夜景写真を撮る際も、出来るだけ明かりの部分が目立つように構図をつくるのが基本です。実際の見た目よりも少し明るい印象の写真に仕上げてみても良いかもしれません。
明るい部分が目立つようにするためにもあまり暗い部分がたくさん入りすぎないように構図を作るのが無難です。
構図撮り方のアイデア
具体例を出しながらいくつか構図や撮り方のアイデアを提案します。
①明るいところに影を置く
まず下の写真を見てどんな印象を持つでしょうか?
神戸ハーバーランドのモザイクの夜景を撮りました。手前にはカップルが仲よさそうに腰かけてその景色を眺めています。しかし残念ながらこのカップルの写っている位置が暗くてパッと見たときに気づきにくいです。そこで下の写真のようにしてみました。
いかがでしょうか。最初の写真を撮った位置から少し右側に動いて撮っています。水面に反射する光の中にカップルの影がくっきりと目立つようになりました。
さらに思い切って構図を整理したのが縦構図のこちらの写真です。きれいな夜景とカップルのシルエットでより分かりやすい写真になりました。
このように光と影を意識することは写真の撮影のうえでとても大事になります。シルエットを演出したいときは撮影する立ち位置をよく考えて光のなかに影が浮かぶようにしましょう。
②玉ボケでキラキラ演出
イルミネーションの光は必ずしも直接撮る必要はありません。背景に光を置くことで玉ボケをつくることができます。玉ボケがたくさんあるとキラキラして美しいです。
玉ボケをつくるときは、できるだけ被写体に近づいてF値を小さくして撮影するのがコツです。
③リフレクション
夜景の副題にリフレクション(映り込み)を利用するのもよく用いられる手法です。上の写真は雨が降ってできた水たまりを使って撮影しています。
水たまり以外にもツルツルして平らな場所を探すとリフレクションが見つかります。必ずしも大きな平面を探す必要はなくて、ちょっとしたところの映り込みが意外と絵になることがあるので日頃からよく観察すると良いです。
④光の軌跡
三脚にカメラを固定して長時間露光撮影をすることで光の筋を撮ることができます。定番なのが写真のような車のライトを撮った写真。
交差点や歩道橋、高速道路が行き交うジャンクションなどが絶好の撮影スポットになります。普段気にとめないような場所かもしれませんが意外と写真映えする場所があるのでぜひ探してみましょう。
⑤噴水や水面を交える
先ほどのリフレクションや光の軌跡にも通じますが、夜景に副題を添えることで写真が面白くなります。夜景に絡めやすい素材のひとつが水です。
噴水越しの夜景や水面にイルミネーションの光が反射している様子などを狙って撮ってみると良いかもしれません。
⑥露光間ズーム
ちょっとした飛び道具的な技法ですが「露光間ズーム」という撮影方法があります。シャッターを切ると同時にズームすることでちょっと不思議な見た目の写真が撮れます。
具体的な撮影方法は次の記事で解説しています。
⑦カメラやスマホを構えている様子を撮る
スマホ越しの夜景。手前にピントを置くことで夜景が良い具合にボケてくれます。
また、夜景がきれいな所に行けば、自分だけでなく他の人たちもカメラを構えて写真を撮っています。その様子を撮ってあげると生き生きとしたスナップ写真が撮れるのでこれもおすすめです。
夜景写真 手持ち撮影のコツ
手ブレさせないシャッタースピードに
夜景の手持ち撮影で最も注意したいのが手ブレです。手ブレが起きてしまう主な原因はカメラをしっかり構えられていないか、シャッタースピードが遅すぎるかです。
適切なシャッタースピードは「1/焦点距離」より速く
シャッタースピードは「1/焦点距離」より速い数値に設定すると良いです。もし焦点距離50mmで撮影しているならシャッタースピードは1/50より速くすることが望ましいです。これが手ブレを起こしにくい基本のシャッタースピードと言われています。
ちなみにこれはフルサイズセンサーのカメラの場合の基準値。キヤノンのAPS-C機を使っている場合は焦点距離を1.6倍にして計算します。ニコンやソニーなどほかのメーカーのAPS-Cサイズのカメラの場合は1.5倍です。パナソニックやオリンパスのマイクロフォーサーズ機を用いているなら2倍です。例えばEOS Kissシリーズのカメラで焦点距離50mmで撮影しているなら1/80のシャッタースピードを確保しましょう。
シャッタースピードを速くするために必要なこと
シャッタースピードを速くするとそのぶん露出が暗くなってしまうので、絞りや ISOで補わなければなりません。F値をできるだけ小さく、ISOを高めに設定しましょう。
例えば次の写真は手持ちで撮影した作例です。
焦点距離50mm、シャッタースピード1/80、F値5、ISO6400です。一眼レフのエントリーモデルEOS Kiss X9と便利ズームレンズのEF-S 18-135mm f/3.5-5.6 IS STMの組み合わせ。カメラとレンズの性能は悪くないものの最近のカメラとしてはごく標準的なレベルです。F値もあまり小さく出来ないのでISOを6400と高くしています。
ISOが大きな数字になると画質は劣化します。ISOを6400まで上げているので、あまり鮮明な映りとは言えません。しかし、それでも手ブレを起こすよりずっとましです。ブレてにじんだ写真を撮るよりISOを思い切り上げてしっかりシャッタースピードを上げましょう。
普段絞り優先モード(Avモード)で撮影している人にありがちなことですが、できるだけISOを低くしようとしたあまりISOを下げすぎてシャッタースピードが遅く手ブレしてしまうことがあります。カメラのモニターで確認したときは手ブレがわからなくても後でパソコンの大きなモニターで見たときに手ブレが判明することもよくある話です。
実際に撮影するシーンでしっかりISOを上げられるように、事前に自分の許容できるISO上限を把握しておくことをおすすめします。
慣れてきてやっぱり高ISO値での手持ち撮影のクオリティに納得いかなければ、のちに説明する三脚を用いた撮影をしたり、より明るい単焦点レンズを買ったりするなど解決策を考えましょう。人によってはセンサーサイズの大きい高級カメラを買うことで解決しようとする場合もあります。
露出の勉強におすすめなのは次の「クリップオンストロボ 本格ライティング ~オフカメラストロボ撮影を基礎から学ぶ」。ストロボの活用法について書かれた本ですが、ストロボというのは結局のところ光のコントロールの話なので露出の基礎を学ぶ上でもわかりやすいです。
あと有名なので紹介しておくと「ナショナルジオグラフィック」から露出について書かれた本が出ています。個人的には上で紹介した本のほうがおすすめですが一応人気書籍なのでリンクを張っておきます。
案外カメラに詳しい人でも露出の基本を知らなかったりするので、早いうちに書籍などで勉強しておくととても役に立ちます。「露出の三角形」とか、「段」という露出の単位のこと、F値がなぜ一見中途半端な小数点の数字になるのかなど、色々な知識をつけておいて損はないと思います。
夜景写真 三脚撮影の方法と設定
三脚簡単撮影の設定
まず簡単にきれいに撮影する方法をご紹介します。
- 構図を決めて三脚をセットする
- カメラを「絞り優先モード」にする
- F値を8、ISOを100にする(100にできない場合はそのカメラのベースの値にする。例えば200)
- シャッターを切る
これだけです!難しいことを考えたくない場合はとりあえずこれで撮っておけば失敗が少なく撮影できるはずです。
三脚を用いるメリット
①手ブレを防げる
夜景のような暗いシーンの手持ち撮影は手ブレしがちです。三脚にカメラを固定することで手ブレを防げます。
②遅めのシャッタースピードで動きを表現できる
三脚を使えばスローシャッターにすることができるので、被写体ブレを利用して動きを表現できます。構図のアイデアで紹介した「光の軌跡」や「露光間ズーム」がこれにあたります。花火撮影も似たような撮影です。
③ISOを低く設定できる
手持ち撮影ではシャッタスピードを確保するためにISOを上げなければならないと書きました。しかし三脚撮影では長時間露光ができるのでISOを低い値で大丈夫です。低いISOで高画質の写真を撮れます。ぜひISO100やISO200できれいな夜景写真を撮りましょう。
④絞ってF値を大きくできる
三脚で長時間露光をすればF値も手ブレを心配することなく自由に設定できます。絞り込むことができるので、より被写界深度の深い(ピントの合う範囲がひろい)くっきりとした夜景写真を撮れます。またF値を8程度に絞れば、レンズ特有の収差をある程度補正できてより良好な映りになります。
さらに絞りを変えることで光芒の形も変化します。先ほど三脚撮影の際はF値を8にすると書きましたが、これはあくまで無難な数値なので必ずしも8でなければならないという意味ではありません。私はその時々で絞りを11や16、あるいはそれ以上の数字に設定して好みの光芒の形になるように調整しています。光芒の形はレンズの種類にも左右されるのでぜひ色々試してみてください。
ちなみに過度に絞り込んでいくと回折現象(小絞りボケ)という画像の劣化が起こることがあります。絞れば絞るほど画質がくっきりとするわけではないのでご注意ください。回折現象はデジタル処理で改善できることもあるので、カメラの設定でレンズ補正機能をオンにしたりレタッチソフトの補正機能を有効活用すると良いでしょう(参考:キヤノン:デジタルレンズオプティマイザ|効果|回折現象低減)。
以上のように三脚を使うとたくさんのメリットがあります。ぜひ三脚を使った夜景の撮影に挑戦してみてください。
私がいまメインで使っている三脚はK&F Conceptの「TM2834(KF09.031)」という三脚です。持ち運びのケースも付属しているので最近はいつもこれを持って夜景撮影に出かけています。
参考:TM2834アルミ三脚 一脚可変 自由雲台 4段全高1630mm – K&F Concept
夜景写真をRAW現像ソフトでレタッチ
現在はデジタル写真が主流の時代。カメラで記録したデータをもとにパソコンで編集ソフトを使って写真をより自分の表現したいものに近づけることができます。そういった写真の編集・加工作業のことを「レタッチ」と呼びます。レタッチは非常に奥が深いのですが、ここでは夜景のレタッチの作法をひとつだけご紹介します。
RAW現像ソフト
レタッチをする場合はできればRAW形式で写真を撮っておきましょう。JPEGよりも自由度高く、また画像の劣化を少なく編集できます。
RAWデータを取り扱うには専門のソフトが必要になります。様々なソフトがありますが、最もメジャーなのは「Adobe Lightroom」。私が普段よく使っているのはキヤノンの「Digital Photo Professional 4」(DPP4)という無料ソフトです。今回のレタッチの説明はこのDPP4を用いて行いますが、使っている機能はほとんどソフトの種類を問わず使える基礎的な機能です。
イルミネーションの色をきれいに見せるコツ
夜景の撮影でよくある悩みのひとつが「思ったほどイルミネーションの色がはっきり濃く出ない」ということ。
基本的にイルミネーションの部分はすごく明るいので、まず撮影の段階でできるだけイルミネーションに露出を合わせましょう。イルミネーションが白っぽいと思ったら露出を下げると良いです。そうすることでイルミネーションの色がはっきりと出ます。
例えばこちらの写真をご覧ください。
一見きれいに撮れているようにも見えます。しかし、注目してほしいのはポートタワーの色。骨組みはオレンジ色で、建物の中央部分がピンク色に明るく光っているように見えます。しかし、この日のポートタワーの実際に肉眼で見たときの色はもう少し違った色になっていたのです。
同じ日に撮ったもう一枚の写真をご覧ください。こちらはより実際の見た目に近い色になっています。
これら2枚の写真のポートタワーの部分だけを拡大して比べてみましょう。
イルミネーションの色は動きがあるので厳密には同じものを撮ったわけではないのですが、少なくとも様々な色が混じっていることがわかると思います。それもそのはずで、この日はポートタワーの開業54周年を祝して虹色の特別イルミネーションになっていたのです。せっかく普段と違った色になっているのに1枚目の写真ではその色がよくわかりませんよね。
このようにイルミネーションの色が白みがかってあまりきれいに出ないときは露出を下げるのがコツです。
一方で露出を下げるとイルミネーション以外の部分も暗くなってしまいます。暗い部分をもう少し明るくしたい場合は、レタッチの際にシャドウの部分を持ち上げてあげましょう。もしくはコントラストを下げることでも暗い部分が明るく見えるようになります。
まずRAW現像ソフトのトーンカーブで補正した写真です。
ポートタワーのイルミネーションの色がきちんと見える状態で、ほかの部分も明るなっていますね。空の色が明るくなり他のビルの光もよりよく見えるようになりました。
行った作業はごくシンプルです。トーンカーブを開いて、作業点を3つ作ります。そして左下の点を上に持ち上げる。たったこれだけで上の写真のようになりました。ほとんどのレタッチソフトがトーンカーブの機能を備えているのでぜひ試してみてください。
次にスライダーで補正した例その1です。
これはスライダーでシャドウの項目を右に動かしただけです。
スライダーで補正した例その2。
今度はシャドウを持ち上げてから、コントラストの部分を下げてみました。明るいところと暗いところの差が縮まっています。先ほどの写真と比べると少しメリハリがなくなりましたが、トータルで見たときにより明るい印象になりました。
この写真とレタッチ前の写真を比べると次のようになります。
レタッチに適した素材写真の撮り方
RAW現像のコツとしては、撮影の際に少し暗めにとっておくことです。イルミネーションなどハイライトが白飛びしてしまうとレタッチでも復元が難しいです。どちらかというと暗い部分を明るくする方がレタッチで良い結果を生みやすいです。
最初に出した露出オーバーのポートタワーの写真をもう一度見てみましょう。
これをレタッチで露出を一段下げてやります。
さらにもう一段下げたのがこちら。
いかがでしょうか。このように露出を下げるとポートタワーのオレンジ色の部分は少し濃くなったものの、虹色の部分はほとんど色が回復していないことがわかります。レタッチも万能ではありません。
後からレタッチするにしても、撮影の段階で一番大事にしたいイルミネーションの色がしっかり見えるようにしておくことは大事です。
ちなみにきちんと写真をレタッチするには、相応のパソコンとディスプレイを用いることが望ましいです。
まとめ 夜景のきれいな所へ出かけて写真を撮ろう
夜景の撮影方法のご紹介でした。基本的な撮影方法はこの記事に書いた通りです。あとはとにかく実践を重ねながら自分なりの夜景写真を目指しましょう。良い写真が撮れるのであれば私が書いた方法に無理に従う必要もありません。ぜひ夜景のきれいな場所へ積極的に出かけて良い写真をたくさん撮ってください。
夜景撮影についてまた別の視点で記事を書いています。こちらもぜひご覧ください。
私が撮影した夜景の作例はFlickrのアルバムに主なものをまとめています。こちらの写真にはシャッタースピードやF値といった設定の数字もわかるようになっているので参考にしてみてください。
神戸の夜景 Nightscape of KOBE | Flickr
参考ウェブサイト:【キヤノン公式】夜景の撮影は難しい?初心者でもかんたんキレイに撮れるテクニック|カメラ初心者教室
冬はイルミネーションがきれいで夜景撮影の楽しい季節ですが寒さ対策が大事です。暖かい服装で体調を崩さないようお気をつけください。
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